看護学生の頃に記録を書くのに悩むことがありました。「色々とまとめてるのものがあればっ!」と思っていたのでまとめました。
脳梗塞は脳卒中の中の1つです。
脳卒中は毎年、死因が上位となる病気で寝たきりになる原因も脳卒中が毎年上位となります。
1、脳梗塞とは
何らかの原因により脳の動脈が詰まると、血液に含まれる酸素や栄養などを脳細胞に送り届けることができなくなります。
脳細胞に酸素や栄養などが届けられなければ、脳細胞は壊死します。
この状態が脳梗塞になります。
脳梗塞は動脈が詰まって脳細胞が壊死することなのだ
2、種類
脳梗塞は大きく分けて4種類に分けることができます。
1).ラクナ梗塞
「ラクナ」とはラテン語で小さなくぼみなのだ
脳の細い動脈に血栓ができて、血管が詰まる状態です。
細い動脈とは、主幹脳動脈から枝わかれした穿通動脈のことで、脳の深い部位に酸素や栄養などを送り届けています。
この穿通動脈が詰まると酸素や栄養などが行き届かなくなるため脳細胞は壊死します。
この状態がラクナ梗塞になります。
穿通動脈が梗塞された時、脳細胞が壊死する範囲は15mm未満とされています。
脳細胞の壊死が微小であるため、自覚症状がないことが多く、無症状の脳梗塞を無症候性脳梗塞と呼びます。
2).アテローム血栓性脳梗塞
アテロームにより脳内の動脈の血流が悪くなったり、詰まったりします。
この状態になると脳細胞に酸素や栄養などを送り届けることができず、脳細胞が壊死します。
この状態がアテローム血栓性脳梗塞になります。
アテロームとは「粥腫」「粉瘤」などの意味になります。
アテローム血栓性脳梗塞は動脈内壁に脂肪やコレステロールなどがたまることで粥腫が作られます。
粥腫ができる主な原因は「動脈硬化」になります。
粥腫は比較的太い血管である「中大脳動脈」「脳底動脈」「内頸動脈」「椎骨動脈」などに生じやすく、粥腫が生じると血管が細くなります。
脳内の比較的太い血管が細くなると血流は悪くなり、進行すると血管が詰まります。
また、粥腫から出血が起こると、粥腫を覆う様に血栓ができ、これも血管を細くさせる原因の1つになります。
さらに粥腫や血栓が分離して脳内のより細い血管を詰まらせることもあります。
脳内の血管以外である内頸動脈や椎骨動脈などに粥腫が生じて血栓が形成された場合でも、粥腫や血栓が分離して脳内の血管を詰まらせることがあります。
3).心原性脳塞栓症
心臓で作られた血栓が血流により脳内の動脈へ移動して詰まった状態になります。
血栓は加齢や心疾患により心臓の働きが悪くなり、血流が澱むことで心臓内の血液が固まり血栓が作られます。
4).その他の脳梗塞
もやもや病や脳動脈解離、腫瘍塞栓、鉛筆外傷などによる脳梗塞です。
3、原因
1).血栓性
血栓性は脳内の動脈に血栓ができたことで血管の血流が悪くなったり、詰まったりします。
血栓は血管などの中で血液が固まり、塊になった状態のことで、血流や血液、血管などに異常が起こると作られます。
血栓が作られる原因異常が単独の場合もありますが、多くはそれぞれが相互に関係して作られます。
緩やかに症状が進行するため徐々に脳梗塞の症状が出現します。
2).塞栓性
作られた血栓が剥がれ、血流により脳に運ばれて脳内の動脈を塞ぎます。
突発的に起こることが多く重症化や死亡率が高いです。
血栓は動脈と静脈にそれぞれ作られ、動脈では「動脈血栓症」静脈では「静脈血栓症」と呼ばれます。
動脈血栓症
「どろどろの血液」「血液異常」「血管異常」などがあるとリスクが高くなります。
主な原因は高血圧や脂質異常、糖尿病などの動脈硬化のリスクとなる疾患や不整脈、血管炎、脱水症などがあります。
静脈血栓症
主な原因は「長時間同じ姿勢」「長期臥床」「肥満」「妊婦」「ギプス固定」「術後」など、さまざまになります。
共通点は「筋肉を動かせない状態」「重さによる圧迫」などになります。
3).血行力学性
「側副血行路の働き」「脳の動脈が狭いが少ない血流はある」などで脳細胞が生きている場合、普段は脳梗塞の症状はありません。
急な血圧の低下や脱水症状などにより脳の動脈の血流量が少なくなった時に、その部位が梗塞となる脳梗塞です。
血流量が少なくなると脳梗塞のリスクが高くなるのだ
4).危険因子
- 動脈硬化
- 高血圧症
- 糖尿病
- 心房細動
- 慢性腎臓病
- 脂質異常症
- 血液凝固異常症
- エコノミー症候群
- メタボリックシンドローム
- 喫煙
- 飲酒
- ストレス
- 運動不足
- 睡眠不足
まとめてあるのだ
4、脳梗塞によるリスク
1).頭蓋内圧亢進
頭蓋内圧は脳や血液、髄液により生じています。
この圧力が「浮腫」「腫瘍」「血腫」「膿瘍」などで高くなる状態です。
頭蓋内圧亢進の三徴候
覚えておくのだ
- 頭痛
- 嘔吐
- うっ血乳頭「視神経乳頭の腫脹」
脳ヘルニア
ヘルニアとは臓器があるべき場所からなんらかの原因により脱出することです。
頭蓋内圧が高くなることであるべき場所の脳が脳の中の境界や隙間といった隣接する空間に押し出され脱出した状態になります。
2).高次脳機能障害
- 失語
- 失認
- 失行
- 半側空間無視
- 注意障害
- 記憶障害
- 遂行機能障害
- 地誌的障害
- 行動と情緒の障害
高次脳機能障害についてまとめてあるのだ
3).再発性脳梗塞
脳梗塞を再び起こす状態です。
4).誤嚥性肺炎
気管や肺に誤って唾液や飲み物、食べ物などが入り込むことを誤嚥と言います。
細菌なども一緒に入り込みます。
感染や異物により肺が炎症を起こすと誤嚥性肺炎になります。
高齢者に多いのだ
5).褥瘡
寝たきりなどにより重力で骨と皮膚表層の間の軟部組織が圧迫されます。
圧迫されている状態が長く続くと血液の流れが悪くなったり滞ったりします。
血液が行き届かないと皮膚の細胞に十分な酸素や栄養が行かなくなるため皮膚に発赤や潰瘍などができる状態です。
時間を決めて体位変換をするのだ
5、症状
心原性脳塞栓症は「突然」「激しい」といった症状が出現しますがそれ以外の脳梗塞は徐々に症状が出現することが多いです。
1).障害された部位による症状
障害された部位によって症状が少し違うのだ
6、検査
- 血液検査
- 頭部XーP
- 頭部CT
- ヘリカルCT
- 脳血管造影
- 頭部MRI、MRA
- 頸動脈超音波
- SPECT
- 脳血流SPECT
7、治療
1).急性期
- 血栓溶解療法
- 脳保護療法
- 抗脳浮腫療法
- 抗血栓療法
- 脳血管リハビリテーション療法
2).回復期
- 脳血管リハビリテーション療法
- 再発予防
3).慢性期
- 脳血管リハビリテーション療法
- 再発予防
8、看護のポイント
1).応急処置
脳梗塞の治療は時間との戦いになります。
早く治療すればするほど治療効果が高く後遺症も少なくなります。
救急車を呼び一刻も早く病院に連れて行きます。
ポイントなのだ
ポイント
救急車が来る前に次のことをします。
- 安全な場所に移動する
- ネクタイや衣類などを緩めて呼吸の確保をする
- 嘔吐がある場合、麻痺側を上にして側臥位にする
2).意識障害
意識の混濁や変容、JCSやGCSで意識レベルをみます。
意識障害を確認するのだ
意識障害がある場合、舌根沈下となりやすく気道を塞ぐリスクが高いです。
呼吸困難や自発呼吸の停止などの状態に合わせて気管内挿管や人工呼吸器、酸素吸入などの治療や援助が必要となります。
ジャパン・コーマ・スケール「JCS」
- 0:意識清明
Ⅰ:刺激しないでも覚醒している状態
- 1:だいたい意識清明だが今ひとつはっきりしない
- 2:見当識障害がある
- 3:自分の名前、生年月日が言えない
Ⅱ:刺激をすると覚醒する状態/刺激をやめると眠り込む
- 10:普通の呼びかけで容易に開眼
- 20:大きな声または体をゆさぶることにより開眼する
- 30:痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する
Ⅲ:刺激しても覚醒しない状態
- 100:痛み刺激に対し払いのけるような動作をする
- 200:痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめる
- 300:痛み刺激に反応しない
グラスゴー・コーマ・スケール「GCS」
- 最軽症15点
- 最重症3点
E:eye opening【開眼】
- 4点:自発的に開眼
- 3点:呼びかけにより開眼
- 2点:痛み刺激により開眼
- 1点:痛み刺激にも開眼しない
V:best verbal response【最良言語機能】
- 5点:見当識あり
- 4点:混乱した会話
- 3点:不適当な発語
- 2点:理解不明な音声
- 1点:発語なし
M:best motor response【最良運動反応】
- 6点:命令に応じる
- 5点:疼痛部位を認識する
- 4点:痛み刺激から逃避する
- 3点:痛み刺激に対して屈曲運動を示す
- 2点:痛み刺激に対して伸展運動を示す
- 1点:痛み刺激に対して反応なし
3).体温
発症から約1時間以内に38℃以上の高体温になることがあります。
高体温は約30%の確率と言われているのだ
死亡率の増加や機能障害の悪化など予後に関連しています。
4).呼吸
呼吸数が40回/分以上や6回/分以下は急変している可能性が高くなります。
呼吸のリズムや性状を観察して異常呼吸の有無を観察します。
呼吸の観察は重要なのだ
5).血圧
脳梗塞になるとほとんどの人は血圧が高くなります。
BP220/120mmHg以上でなければ血圧は高いまま管理します。
血圧を下げるのはリスクがあるのだ
6).瞳孔
瞳孔の大きさが左右で異なったり形がいびつ、位置が離れている、対光反射の減弱などがあります。
ペンライトを使うのだ
瞳孔の著しい状態変化は急変の可能性があります。
正常
- 瞳孔径:2.5mm~4.0mm
- 大きさ:左右同じ
- 形:丸い形
- 位置:中央
異常
- 瞳孔径:縮瞳2mm以下・散大5mm以上・左右差0.5mm以上
- 大きさ:左右異なる
- 形:いびつ
- 位置:内側や外側・左右離れる・内側に寄る
- その他:片目もしくは両目の対交反射が弱い
7).症状予想
意識障害がある人でも脳の障害部位により出現する症状を予想できます。
状態が安定したら実際に現れる症状を確認、観察して援助をします。
必要な援助を考えるのだ
8).再発予防
脳梗塞は再発する確率が高いです。
1年後で約10%
10年後で約50%
と言われているのだ
再発をするとさらに脳を傷つけて障害が重くなります。
再発予防のために規則正しい生活習慣や予防薬剤を内服、危険因子の排除をします。
9).家族や関わりのある方への配慮
障害が残り今まで通りの生活ができなくなったり意識が戻らない場合や亡くなる場合などがあるため十分配慮して関わる必要があります。
9、看護計画
下記の項目から対象者を当てはめ、必要な項目を詳しく考えていきます。
1).O-P
身体症状
- 体温
- 脈拍
- 血圧
- 呼吸
- 意識レベル
- 意識障害の有無
- 脳梗塞の症状やその変化
- 褥瘡の有無
- 瞳孔の状態
- 術後の経過
- 原因や誘引の有無
精神症状
- 脳梗塞の症状やその変化
- 障害による人格変容
- 高次脳機能障害
生理的状態
- 排尿
- 排便
生活因子の状態
- 食事摂取量
- 水分摂取量
- 補食の有無
- 喫煙の有無
- 飲酒の有無
- 睡眠状況
- 活動と休息のバランス
治療に関すること
- 治療方法の効果
- 診察や検査結果からの変化
- 治療や検査など患者「家族」の思い
- 点滴の滴下や刺入部の観察
- 薬剤による副作用
- 酸素療法によるリスク
2).T-P
日常生活の援助
自分でできる方であれば日常生活の援助はあまり必要ありませんが「身体的理由」「精神的理由」「病識欠如」「意欲低下」などの理由でできない方は援助をしていきます。
- 洗面
- 口腔ケア
- 整容
- 食事
- 排泄
- 入浴
- 清拭
- 更衣
環境の調節
- 温度
- 湿度
- 刺激を抑えるためカーテンを閉める
障害内容による看護
- おむつ交換
- コミニケーション方法の確立
- 食事介助
- 体位変換
- 歩行介助
- 入浴介助
その他の援助
- 感染予防対策
- 服薬状況の管理
- ストレスの発散方法
- 排便コントロール
- 排便習慣の確立
- 脳血管リハビリテーションの実践
- 家族や関わりのある方への配慮
3).E-P
- 食事療法
- 運動療法
- 禁煙
- 規則正しい生活習慣
- 薬物療法
- 脳梗塞の症状の報告をしてもらう
- 退院後の生活
- 節酒や断酒
- 排便時のいきみ
4).ポイント
- 急性期は生命維持など、回復期はADLの向上など、慢性期ADLの維持など、それぞれに合わせた計画の立案
- 合併症の予防や早期発見できる観察
- 実践可能な立案
- 個別性な立案
- 生活習慣に合わせた指導内容
- ストレス軽減になる思考方法や解消方法の確立
- 薬剤の副作用に合わせた指導内容
- 原因となる因子の排除に向けた計画内容
- 自立に向けた援助や指導内容
- 退院後の生活における社会資源の活用
脳梗塞の原因を調べて再発防止に努めるのだ