看護学生の頃に記録を書くのに悩むことがありました。「色々とまとめてるのものがあればっ!」と思っていたのでまとめました。
精神科病院で入院している約半数以上は統合失調症と言われています。
結構身近にある病気なのはご存知ですか。
どんな病気なんだろう…
1、統合失調症とは
「幻覚」「妄想」「考えや気持ちがまとまらなくなる」「意欲低下」などの状態が続くことです。
原因は脳の機能にあると考えられています。
1).発症率
100 人に1 人が発症すると考えられています。
意外と多いのだ
2).好発年齢
「10代〜の20代の思春期」「40歳〜45歳」の発症率が高くなっています。
3).原因
はっきりとした原因は不明ですが「神経伝達物質」の関わりがあると考えられています。
「生まれながらの素因」や「社会的な要因」が相互に作用し神経伝達物質のバランスを崩していることが原因と考えられてます。
まだ詳しくはわかっていないのだ
生まれながらの素因
- ストレスに対するもろさ
- 神経の過敏さ
社会的な要因
- 日常的なストレス
- 生活環境
神経伝達物質
- ドーパミン
- セロトニン
ドーパミン
- 神経伝達物質のひとつ
- アドレナリンやノルアドレナリンの前駆体
- 「運動の調節」「ホルモンの調節」「快の感情」「意欲」「学習」などに関わっている
- ドーパミンの過剰放出は「陽性症状」の出現に関わりがあると考えられている
- ドーパミンの放出不足は「陰性症状」の出現に関わりがあると考えられている
ドーパミンの減少はパーキンソン病と同じような状態に…
だからパーキンソン様症状が出現するのだ
セロトニン
- 神経伝達物質のひとつ
- ドーパミンやノルアドレナリンを制御して精神を安定させる働きがある
- セロトニンの分泌が低下するとドーパミンやノルアドレナリンのバランスが崩れて「易怒性」「攻撃性」が出現したり不安やうつ病などが引き起こされると考えられている
- セロトニンの働きを遮断する抗精神病薬により「陰性症状」が改善される例がある
4).タイプ
4つのタイプに分かれます
色々な型があるのだ
型によって症状が違うのだ
妄想型
30歳前後で発症することが多いです。
人格変容は少なく予後は良いとされています。
1番軽いとされている型です。
「幻覚」「妄想」などの陽性症状が出現します。
破瓜型
思春期〜青年期と徐々に発症することが多いです。
1番多いとされている型です。
「感情の平板化」「意欲減退」などの陰性症状が出現し「支離滅裂」などの陽性症状が徐々に出現します。
慢性的な経過をたどることが多く人格変容など予後が良くないことがあります。
緊張型
20歳前後に発症することが多いです。
興奮状態や昏迷状態が出現します。
「大声」「奇声」などがあますが予後は比較的良いとされています。
破瓜型に似た経過をたどることがあります。
残遺型
統合失調症が進行していく慢性段階の状態です。
長期にわたる陰性症状や自己管理、社会的能力の貧困が主な症状です。
分類不能
「幻覚」「妄想」「思考障害」「奇異的行動」「支離滅裂」「感情の平板化」「意欲減退」などの色々な症状が混在しています。
2、経過
経過は「順番にたどる」「飛ばす」など個人差があります。
個人差が大きいのだ
1).前兆期
急性期の前に色々な症状が出現します。
初発の場合は症状から統合失調症と診断することは難しいです。
再発の場合は不調となる前ぶれとして本人や周囲の人が早期発見するための前兆となります。
症状
- 不安感
- 焦燥感
- 感覚過敏
- 集中力低下
- 気力減退
- 不眠
- 食欲不振
- 頭痛
2).急性期
幻覚や妄想などの症状が出現します。
幻覚や妄想は統合失調症に特徴的な症状で不安や恐怖、切迫感などを強く引き起こします。
行動に影響が及ぶことが多く睡眠、食事、生活リズムなどが崩れます。
症状
- 不眠
- 食欲不振
- 摂食障害
- 奇異行動
- 対人関係障害
3).回復期
症状が徐々に治り現実感を取り戻します。
症状が良くなったように見えますが元気が出ない時期です。
症状
- 疲労感
- 意欲減退
- 不安感
- 焦燥感
4).安定期
症状も落ち着き安定します。
病気となる前の状態にまで回復する場合もあるが症状の一部が残り続く場合もあります。
安定期を長く持続しリハビリテーションにより社会復帰をします。
再発するリスクはあるため服薬治療は主治医と相談して継続していきます。
服薬治療を自己中断すると再発率があがるため注意が必要です。
5).予後
50%以上は「治癒」「軽度障害」など良好な予後となります。
約20%は「重度障害」となります。
医療の進歩と共に良好な予後となる割合が増えています。
「早期発見」「早期治療」をすることで良好な予後となります。
再発の場合も「早期発見」「早期治療」により症状をコントロールしやすくなります。
半分以上の方は良好な経過をたどるのだ
6).再発率
服薬を自己中断する方が約50%います。
服薬を自己中断すると2年以内に80%以上の確率で再発すると考えられています。
再発はやばいのだ
薬飲まなくなったら半分以上の人が再発するのだ
再発を繰り返す場合、脳にダメージを受けやすく再発前と比べると症状が悪化することが知られています。
服薬を続けることで再発率を約30%に抑えます。
服薬は再発しても脳へのダメージを抑え症状を軽くします。
3、統合失調症によるリスク
1).強迫性障害
自分の意思に反して不合理なイメージや考えが浮かび同じ行動を繰り返しする状態です。
何度も何度も繰り返すのは辛いのだ…
強迫観念
不快や不安などの気持ちが心につきまとい消そうとしても消せない状態です。
強迫行為
強迫観念による不快や不安を消そうとするために意味の無い行動を繰り返ししてしまう状態です。
- 手を何度も洗う
- 戸締りの確認を何度もする
2).境界性パーソナリティ障害「BPD」
「気分の波が激しい」「感情が極めて不安定」「物事を極端に白黒つける」などの症状がある状態です。
- 衝動的行動
- 2極思考
- 対人関係障害
- 慢性的空虚感
- 自己同一性障害
- 依存症
- 自己破壊行動
境界性とは
神経症の症状「強いイライラ」や統合失調症の症状「現実が冷静に認識できない」2つの精神疾患の「境界」にある症状を示すためことから由来されたと考えられています。
知らなかったのだ…
パーソナリティとは
「人格」「個性」「性格」などのことです。
3).うつ病
精神的ストレスや身体的ストレスが重なることで脳の機能障害が起きている状態です。
うつ病について詳しくまとめてあるのだ
4).糖尿病
インスリンの分泌量が少ない、分泌がない、インスリンが十分に働かないなどにより血液中の糖が増えている状態です。
様々な合併を引き起こすリスクが高くなります。
糖尿病について詳しくまとめてあるのだ
5).脂質異常症
血液中のコレステロール値が必要以上に「増える」「減る」などに状態です。
動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞などのリスクが高くなります。
高LDLコレステロール血症
LDLコレステロールとは「悪玉コレステロール」のことです。
血液中のLDLコレステロールが必要以上多い状態です。
LDLコレステロール:140mg/dl以上
低HDLコレステロール血症
HDLコレステロールとは「善玉コレステロール」のことです。
血液中のHDLコレステロールが必要以上に少ない状態です。
HDLコレステロール:40mg/dl未満
高トリグリセライド血症
トリグリ「セリド」セライドとは「中性脂肪」のことです。
血液中のトリグリセライドが必要以上多い状態です。
トリグリセリド「TG」:150mg/dl以上
4、抗精神病薬による副作用
観察して早期発見することが大切なのだ
1).錐体外路症状
錐体外路が障害されることで出現する症状のことです。
大きく2つに分けることができます。
運動減少症
- 筋強鋼
- 運動緩慢
- 無動
運動過多症
- 振戦
- 舞踏運動
- バリズム
- アテトーゼ様運動
- ジストニア
2).パーキンソン様症状
錐体外路症状の1つです。
抗精神病薬を服薬することでパーキンソン病に似た症状が出現する状態です。
抗精神病薬の服薬を中止すると数ヶ月で回復します。
- 振戦
- 筋固縮
- 無動
- 寡動
- 流涎
- 嚥下障害
- 無表情
- 歩行障害
- 姿勢反射障害
- 動作困難
3).ジストニア
錐体外路症状の1つです。
ジスは「異常な」という意味です
トニアは「筋緊張」という意味です。
不随意な筋緊張が「持続」「亢進」し異常姿勢などが出現する状態です。
特定の筋肉がいつもとほとんど同じパターンで緊張「収縮」するのが特徴です。
- 異常姿勢
- 異常運動
- 眼瞼痙攣
- 痙性斜頸
- 書痙
- 痙攣性発声障害
- 話す時に舌がでる
- 食いしばりがあり開口できない
4).ジスキネジア
錐体外路症状の1つです。
ジスは「異常な」という意味です
キネジアは「運動」という意味です。
自分の意思に関係なく身体が動く状態です。
特定の筋肉がリズミカルに不規則な運動を起こすのが特徴です。
- 舌打ち
- 舌なめずり
- 舌の突出
- 口唇振戦
- 顔をしかめる
- 歯の食いしばり
- 頚部が片側に向く
- 咀嚼の反復運動
- 開口の反復運動
- 指の伸展屈曲の反復運動
- 立位座位の反復運動
5).アカシジア
錐体外路症状の1つです。
静座不能となる状態です。
- 足のむずむず
- じっとしていられない
- 足踏み
- 頻繁に姿勢を変える
- 徘徊
6).悪性症候群
急激に重篤な症状が出現します。
死亡率は4〜10%とばらつきがあります。
命に関わる副作用なのだ
抗精神病薬を服薬している方の発症率は0.1〜2%とばらつきがあります。
- 37.5℃以上の発熱「原因不明」
- 錐体外路症状
- 頻脈
- 頻呼吸
- 血圧上昇
- 筋肉痛
7).性機能障害
男性では勃起不全などになる状態です。
女性ではオルガズム障害などになる状態です。
8).高プロラクチン血症
なんらかの原因でプロラクチンが多く分泌している状態です。
男性
- 勃起不全
- 性欲減退
- 女性化乳房
女性
- 無月経
- 月経不順
- 月経異常
- 乳汁漏出
9).その他
- 便秘
- 排尿障害
- メタボリックシンドローム
- 体重増加
- 過鎮静
- 口渇
- 記憶障害
- 心電図異常
- 月経不順
- 低血圧
- 急激な血糖上昇
5、症状
1).陽性症状
幻覚
対象なき知覚のことです。
外界からの情報がないのに知覚してしまう状態です。
幻覚についてまとめてあるのだ
妄想
根拠がほとんどないのに「非現実的」なことを確信している状態です。
自分で「妄想」と認識することが難しく病識は乏しくなります。
妄想についてまとめてあるのだ
自我意識障害
自己とそれ以外のこと「外界」「他者」などとの境界が曖昧になる状態です。
自我意識障害についてまとめてあるのだ
2).陰性症状
感情鈍麻「平板化」
喜怒哀楽が乏しくなり、他者の感情を共感することも乏しくなる状態です。
楽しい、悲しいなどの感情そのものが乏しくなるため「視線を合わせない」「表情に動きがない」「外界への関心がない」などの症状があります。
意欲減退
全てのことに対して意欲や気力が少なくなり興味や関心を持たなくなる状態です。
興味や関心を持たないため「目的を決める」「行動する」「継続する」ことが困難となり「集中力の低下」「複数のことを同時にできない」などの症状があります。
思考低下
考える能力が低下している状態です。
頭の回転が回らなく判断できなくなります。
会話量が少なくなり「素っ気ない」「途切れ途切れの返事」「答えることができない」などの症状があります。
非社交性
人と関わることを避ける状態です。
「ひきこもる」「社交性の低下」「ぼんやり過ごす」などの症状があります。
3).解体症状
思考障害
さまざまな考えが浮かんできて、考えをまとめることができない状態です。
「まとまりのない会話」「つじつまの合わない会話」「支離滅裂」などの症状があります。
奇異行動
適切な行動ができない状態です。
「不潔行為」「不適切な行動や外見」「興奮」「子供の様な行動」などの症状があります。
4).認知機能障害
認知機能は「記憶」「思考」「理解」「計算」「学習」「言語」「判断」などの知的能力のことです。
これらが障害された状態です。
注意障害
注意散漫となり物事に落ち着いて取り組めない状態です。
また周囲に注意を向けることができない状態です。
- 覚醒度低下:ボーっとする。
- 持続力低下:周囲に気が散って集中できない
- 転導性低下:周囲に注意が行かず気づかない
- 転換性注意力低下:状況に応じた切り替えができない
比較照合障害
情報や刺激に対して適切な情報を照らし合わせることができない状態です。
「物事の全体が把握」「言葉の比喩の理解」などができない症状があります。
概念形成障害
物事の概念が正しく認識できなくなる状態です。
経験や記憶などの情報は整理されてそれぞれに概念化されています。「整理整頓」「料理」などができない症状があります。
5).自殺
自殺をする方の約90%はなんらかの精神疾患を抱えていると考えられています。
そんなに関係あるのか…
統合失調症では「抑うつ状態」や「幻聴」「妄想」に左右されて行動化するなど自殺につながるリスクがあります。
希死念慮
明確な理由はないが死ぬことを願う状態です。
「死にたい」気持ちは幅広く消極的に死を意識することも含まれます。
自殺念慮
明確な理由はないが「死にたい」気持ちが強く自殺を意識して行動しようと考える状態です。
自殺願望
なんらかの原因があり死ぬことでその原因から解放されるために死を願う状態です。
自殺企図
自殺を試みたが死ななかった状態です。
自殺既遂
自殺を試みて死に至った状態です。
6).暴力
怖いのだ
幻聴や妄想などにより他者に対して敵意を持ち暴力を振るう場合があります。
また自己の思い通りにできない、ならないためにイライラして物や人に当たる行為が結果として暴力として現れます。
6、診断方法
1).問診「本人」「家族」
問診は診断基準となります。
- 幻聴の有無や継続期間
- 妄想の有無や継続期間
- 生育歴
- 既往歴
- 家族歴
2).検査
統合失調症と症状が似ている疾病が多く存在するため鑑別するために検査をします。
- 血液検査
- 骨髄検査
- CT
- MRI
7、治療
1).薬物療法
早期に発見して治療をすることが予後に良い影響を与えます。
精神科の薬剤を向精神薬と呼びます。
第1世代抗精神病薬
定型抗精神病薬のことです。
鎮静作用が強く緊張型に対して選択することが多いです。
第2世代抗精神病薬
非定型抗精神病薬のことです。
抗幻覚妄想作用が強く妄想型に対して選択することが多いです。
慢性化した妄想型は難治です。
破瓜型や残遺型は慢性統合失調症に対して選択することが多いです。
クロザピン
- 第2世代抗精神病薬のひとつ
- 無顆粒球症という致命的な副作用が出現するリスクがある
- 使用するためには色々な基準があるため病院によっては採用していないことがある
- リスクが高いため観察がとても重要
クロザピンについてまとめてあるのだ
抗てんかん薬
症状に合わせて選択することがあります。
暴力や多動などに対して選択することがあります。
抗うつ薬
症状に合わせて選択することがあります。
うつ状態などに対して選択します。
睡眠薬
症状に合わせて選択することがあります。
夜間眠れないなどで生活リズムが崩れている方などに対して選択します。
抗不安薬
症状に合わせて選択することがあります。
不安が強いなどの時に選択します。
抗パーキンソン病薬
症状に合わせて選択することがあります。
錐体外路症状を抑えるために選択します。
2).電気けいれん療法「ECT」
電気を使い脳をけいれんさせることで難治性の統合失調症などの症状改善を図る治療法です。
3).精神科リハビリテーション療法
さまざまな症状により生活しづらい日常を少しでも安定して送れるようにする治療法です。
作業療法
作業療法士により行われる治療法です。
手工芸や園芸、音楽、書道、体操、スポーツ、パソコンなどを通じて「楽しみ」「達成感」「充実感」といった感情の回復を図ります。
入院生活技能訓練療法「SST」
コミュニケーション能力、服薬自己管理、ストレス対処法などのスキルを獲得するための治療法です。
その人が「困っていること」「できないけどできるようになりたいこと」などをロールプレイングを行い学びます。
SSTについてまとめてあるのだ
心理教育
病気について正しい知識を学ぶことで病識の獲得をするための治療法です。
本人や家族に対して行われます。
病気に対する理解を深めて「治療への取り組み」「病気との付き合い方」「本人への接し方」「サポートの方法」などを身につけます。
デイケア
社会生活をするための準備プログラムに参加します。
レクレーションや軽作業、料理、SST、心理教育などの活動があります。
参加することで「社会生活に自信がつく」「コミュニケーション能力向上」「友人ができる」「規則正しい生活リズムの獲得」などが期待できます。
4).隔離
自傷や暴力、他患者への迷惑行動などにより隔離室を使用することがあります。
隔離について簡単にまとめあるのだ
8、看護のポイント
1).統合失調症のタイプ
統合失調症のタイプを知ることで現在の症状を知ることができます。
症状に合わせた関わりをします。
2).経過
その人が何期なのかを知ることで現在の症状を知ることができます。
症状に合わせた関わりをします。
3).合併症
「身体的」「精神的」どちらもリスク高くあります。
「状態」「症状」だけでなく検査からも合併症であるかを判断して早急に対応します。
4).薬剤による副作用
薬剤の副作用は個人差が大きいです。
観察してもわかりにくい状態があるため必ず問診をします。
薬剤の副作用は出現しやすいのだ
5).症状
会話や行動などから症状を推測します。
現実的な話に近い「妄想」「幻覚」などがあるためしっかりと症状を確認します。
6).病識
病識を得ることはとても難しいです。
症状が落ち着く「回復期」「安定期」などに病識の獲得を目指します。
7).社会適応能力
社会で生活できるかを評価します。
状態が落ち着いていても「セルフケア能力」「ADL」「IADL」などが低下していると社会生活を送ることは難しくなります。
8).社会資源
社会適応能力が低くても社会資源を使うことで社会生活を送れる可能性が高くなります。
社会生活をする上で何が必要なのかアセスメントします。
9).家族の受け入れ
精神科の患者さんが退院できない理由の多くは家族の受け入れにあります。
受け入れが悪い理由は多くあります。
家族にしかわからない辛い思いをしてるのだ
家族が受け入れたくない理由
- 過去に酷い目にあった
- 状態は落ち着いているけど前の状態に戻ったら怖い
- 入院などの機会により患者さんの居ない生活がとても過ごしやすい
- 兄弟姉妹であり面倒をみたくない
- 近所に知られるのが恥ずかしい
9、看護目標と看護計画
下記の項目から対象者を当てはめ、必要な項目を詳しく考えていきます。
1).看護目標
統合失調症の症状や状態は個別性が強く、看護目標も色々と考えることができます。
問題やストレングスに注目して達成可能な目標を患者さんと一緒に話して決めます。
- 幻聴や妄想に左右されず日常生活を送ることができる
- 精神状態が悪化した時は不穏時を内服できる
- 大声が出る時は自室で休息を図ることができる
- 夜間の十分な睡眠時間が確保できない時は不眠時を内服することができる
- 自己の思いを表出することができる
- 衝動的な言動や行動が出現したら深呼吸をし落ち着きを取り戻せる
- 活動やレクレーションに参加して気分転換を図ることができる
- 気分転換となる方法を知り、精神状態の悪化を防ぐことができる
- 自己の疾患に対して病識を獲得することでき、そのポイントを述べることができる
- 精神状態の悪化となる前兆の症状を把握することができる
- 薬の必要性を理解して内服することができる
- 退院後に自己で薬剤管理ができるようになるため、服薬管理ができる
- 幻聴や妄想の内容を話すことができる
- 隔離室(拘束)で休息が図れる
- 隔離(拘束)開放終了時間に約束通りスムーズに再入室(再拘束)をすることができる
- 身の回りの物を整理整頓することができる
- 1週間に使える金額を理解して金銭管理ができる
2).O-P
身体症状
- 体温
- 脈拍
- 血圧
- 呼吸
- 統合失調症の症状やその変化
- 原因や誘引の有無
精神症状
- 発言内容
- 表情
- 希死念慮の有無
- 自殺企図の有無
- 暴言の有無
- 暴力の有無
- 陽性症状
- 幻覚の有無
- 妄想の有無
- 自我意識障害
- 陰性症状
- 感情鈍麻「平板化」の有無
- 意欲減退の有無
- 思考低下の有無
- 非社交性の有無
- 解体症状
- 思考障害の有無
- 奇異行動の有無
- 認知機能障害
- 注意障害の有無
- 比較照合障害の有無
- 概念形成障害の有無
生理的状態
- 排尿
- 排便
生活因子の状態
- 食事摂取量
- 水分摂取量
- 補食の有無
- 喫煙の有無
- 飲酒の有無
- 睡眠状況
- 活動と休息のバランス
治療に関すること
- 治療方法の効果
- 診察や検査結果からの変化
- 治療や検査など患者「家族」の思い
- 薬剤の副作用
- 錐体外路症状の有無
- パーキンソン様症状の有無
- ジストニアの有無
- ジスキネジアの有無
- アカシジアの有無
- 悪性症候群の有無
- 性機能障害の有無
- 高プロラクチン血症の有無
- 便秘の有無
- 排尿障害の有無
- メタボリックシンドローム
- 体重増加
- 過鎮静の有無
- 口渇の有無
- 記憶障害の有無
- 心電図異常の有無
3).T-P
日常生活の援助
自分でできる方であれば日常生活の援助はあまり必要ありませんが「身体的理由」「精神的理由」「病識欠如」「意欲低下」などの理由でできない方は援助をしていきます。
- 洗面
- 口腔ケア
- 整容
- 食事
- 排泄
- 入浴
- 清拭
- 更衣
- 整理整頓
その他の援助
- 傾聴
- ストレスの発散方法
- 環境の調節
- 排便コントロール
- 排便習慣の確立
- 服薬状況の管理
- 不穏時を促す
- 不眠時を促す
- 金銭管理
- 私物管理
4).E-P
- 病識の獲得
- 適性体重
- 活動と休息のバランス
- 節酒や断酒
- 禁煙
- 規則正しい生活習慣
- 薬物療法の必要性
- 薬剤による副作用
- 統合失調症の症状の報告をしてもらう
- SST
- 退院後の生活に必要な能力の獲得
- 社会資源の活用
5).ポイント
- 合併症の予防や早期発見できる観察
- 実践可能な立案
- 個別性な立案
- 生活習慣に合わせた指導内容
- 薬剤の副作用に合わせた指導内容
- 原因となる因子の排除に向けた計画内容
- 自立に向けた援助や指導内容
- 退院後の生活における社会資源の活用
退院後も服薬は必ず続けて欲しいのだ