看護学生の頃に記録を書くのに悩むことがありました。「色々とまとめてるのものがあればっ!」と思っていたのでまとめました。
うつ病は気分障害の1つに分類されます。
患者数は年々増加傾向にあると言われています。
1、うつ病とは
まずは抑うつ状態を知るのだ
1).抑うつ状態
抑うつ気分とは「憂うつ」「気分の落ち込み」などがある状態のことです。
この状態が強くなることを「抑うつ状態」と言います。
2).うつ病
抑うつ状態が重度であり「気分の落ち込み」「意欲の低下」「楽しみ、喜びを感じることが鈍い」などにより日常生活に支障をきたしている状態のことです。
日常生活に支障があれば病気なのだ
3).発症率
100人に3〜7人に発症すると考えられています。
4).好発年齢
15〜30歳に好発しやすいと考えられていますが、あらゆる年齢で発症します。
男性より女性が多いです。
女性が多い理由はホルモンのバランスが崩れやすいからなのだ
5).原因
詳しい原因はまだ解明されていませんが「脳内の神経伝達物質」によるものと考えられています。
脳内の神経伝達物質
- セロトニン
- ドーパミン
- ノルアドレナリン
他にも「脳の神経損傷」「薬剤の副作用」「ストレス」などがあると考えられています。
詳しく解明されていないのだ
セロトニン
ドーパミンやノルアドレナリンを制御して精神を安定させる働きがあります。
セロトニンの分泌が低下するとドーパミンやノルアドレナリンのバランスが崩れます。
ホルモンのバランスが崩れることで「易怒性」「攻撃性」が出現したり、不安やうつ病などが引き起こされると考えられています。
ドーパミン
アドレナリンやノルアドレナリンの前駆体です。
「運動の調節」「ホルモンの調節」「快の感情」「意欲」「学習」などに関わっています。
ドーパミンの分泌低下は「無快楽」「意欲低下」などの原因と考えられています。
ノルアドレナリン
アドレナリンの前駆体です。
「覚醒」「意欲」「集中力」「記憶力」に関わっています。
アドレナリンの分泌低下は「覚醒不良」「意欲低下」などの原因と考えられています。
ストレスにより分泌されます。
脳の神経損傷
うつ病の患者では「海馬の萎縮」「神経新生の減少」が起きることが報告されています。
まだ、うつ病の原因が脳の神経損傷であることは詳しく解明されていません。
薬剤
頻度は不明ですが薬剤の副作用でうつ病があります。
代表的な薬剤
- インターフェロンα
- 副腎皮質ステロイド
- レセルピン
ストレス
過剰なストレスによりコルチゾールが多量に分泌されると「海馬を萎縮」することが報告されています。
ストレスについてなのだ
2、経過
3段階に分けられます。
経過については4段階、5段階などで表してあることもあるのだ
1).急性期
うつの状態が強い時期です。
薬物療法や休養の必要性を説明して治療を始めます。
薬剤療法により「めまい」「眠気」「吐気」などの副作用が出現しやすい時期です。
気持ちの焦りが回復を遅らせることがあるため、しっかりと休養ができる環境を提供します。
患者のペースに合わせて休養してもらいます。
2).回復期
うつの状態が良い日と悪い日を繰り返す時期です。
徐々にうつの状態が良くなっていくので活動や休養を整えて生活リズムを整えます。
うつの状態が良くなると治療をしなくても良いと思うことがあります。また、社会復帰を目指すあまり、気持ちが先走り無理をすることもあるため注意が必要です。
うつ病の原因やこれからについて、どうしていくのかを学ぶために疾患教室に参加します。
疾患教室では薬物療法を続けていく必要性やうつ病の再発予防を考えていきます。
3).再発予防期
うつの状態が安定して社会復帰をする時期です。
うつ病が再発しないように薬物療法は継続します。他にもSSTや認知行動療法を取り入れます。
社会復帰後もストレスを溜め込んだり無理をしないで生活をします。
4).予後
うつ病は約1年かけて治療を行います。
波のように良い状態、悪い状態を繰り返してゆっくりと改善します。
薬物療法は約50%で症状の改善が見られ、約20%が寛解すると考えられています。
患者に合った薬剤の選択や調整が必要になるため、薬剤の効果があらわれなくても主治医と相談して長期的に治療を進めていきます。
治療は何年もかかるのだ
5).再発率
薬剤療法を自己中断したり無理な生活などにより再発率は約60%と考えられています。
再発を1回繰り返すと再発率は約60%、2回繰り返すと70%、3回繰り返すと約90%と報告もあります。
再発を繰り返すことでうつ病が慢性化しやすくなります。
怠薬は絶対ダメなのだ
3、うつ病によるリスク
1).自殺
自殺をする方の約90%はなんらかの精神疾患を抱えていると考えられています。
死因で10位以内に入ることが多く、特に10〜20代の死因では上位に入ります。
「抑うつ状態」や「妄想」に左右されて自殺につながるリスクがあります
病気がそうさせるのだ
希死念慮
明確な理由はないが死ぬことを願う状態です。
「死にたい」気持ちは幅広く消極的に死を意識することも含まれます。
自殺念慮
明確な理由はないが「死にたい」気持ちが強く自殺を意識して行動しようと考える状態です。
自殺願望
なんらかの原因があり死ぬことでその原因から解放されるために死を願う状態です。
自殺企図
自殺を試みたが死ななかった状態です。
自殺既遂
自殺を試みて死に至った状態です。
2).残遺症状
うつ病が改善しても症状が残ることです。
残遺症状を放置すると再発率は高くなります。
残遺症状は主治医と相談して対処していくのだ
睡眠障害
寝れない状態や寝過ぎる状態、生活リズムが崩れる状態です。
- 不眠
- 過眠
- 生活リズム異常
など
活動上の障害
意欲や集中力が低下することで活動する上で障害が起こります。
他にも記憶力の低下や思考が空回るなどさまざまなことが現れます。
- 意欲低下
- 集中力低下
- 記憶力低下
- 思考力低下
など
身体症状
うつ病による身体症状がある状態です。
- 頭痛
- 倦怠感
- 体力の低下
など
その他
- 抑うつ気分
- 食欲不振
- 不安
など
3).日常生活の支障
「抑うつ気分」「集中力低下」「倦怠感」などにより日常生活を送る上で必要なことができなくなります。
- 衣食住に必要なことができない
- 学校や職場へ行けない
- 勉強や仕事に身が入らずミスを良くする
- 本や新聞など読んでも理解できない
- 動きたくない
- 好きなことさえしたくない
- 人付き合いができない
など
食べることやトイレで排泄することさえ出来なくなる方もいるのだ
4、症状
1).自覚症状
- 抑うつ気分
- 何をしても楽しくない
- 何に対しても興味がわかない
- 疲れているのに寝れない
- 1日中眠い
- かなり早く目覚める
- イライラ
- 何かに急き立てられ落ち着かない
- 何もしていなのに罪悪感を感じ自分を責める
- 自分を無価値だと思う
- 思考力低下
- 希死念慮
など
2).客観的症状
- 表情が暗い
- 涙もろい
- 反応が遅い
- 落ち着かない
- 飲酒量増加
など
3).身体的症状
- 食欲不振
- 倦怠感
- 易疲労感
- 性欲減退
- 頭痛
- 肩こり
- 動悸
- 胃部不快感
- 便秘
- めまい
- 口渇
など
4).精神的症状
- 妄想
など
まとめてあるのだ
5、治療
うつ病は「休養」「環境調整」「薬物療法」「精神療法」などで治療をします。
早期治療に取り組むことが大切です。
1).休養
うつ病治療の第一歩は十分な休養です。
ゆっくりと休むことで「身体的」「精神的」な疲労が軽減する期待があります。
活動できるときには「リラックス」「病棟活動の参加」などによりストレスの軽減を図ります。
2).環境調整
休養
十分な休養ができる環境を整えます。
- 休養時間
- 騒音
- 光
- 空調
- 室温
- 湿度
- 寝具
など
生活スタイル
ストレスのある環境を調節してストレスの軽減をします。
- 職場の配置転換
- 残業時間の短縮
- 有給休暇の取得
- 家事の分担
- 休学
など
生真面目で責任感が強く、自分に厳しくする性格の方がうつ病になる傾向にあります。
環境調整をすることが「周囲への迷惑」と考える方がいるので、主治医に相談して「職場」「学校」「家族」など環境調整を協力してもらう方に相談をします。
ストレス発散
リラックスできる環境を作ったり、好きなことや興味のあること、今までチャレンジしたことがないことなど、その方にあったストレス発散方法を探します。
- 入浴
- 瞑想
- 音楽
- 映画
- カードゲーム
- ボートゲーム
- TV
- 創作
- 料理
- 食事
など
その患者に合ったことをするのだ
3).薬物療法
抗うつ薬には即効性はないため、効果があらわれるまで2〜4週間ぐらい、中にはそれ以上の期間がかかることがあります。
SSRI
抗うつ薬のことです。
Selective Serotonin Reuptake Inhibitorの略称です。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬のことです。
1度放出されたセロトニンの再取り込みを阻害することで神経細胞と神経細胞の間のセロトニン濃度を上昇させて、情報伝達を増強させます。
神経伝達がスムーズになるため抗うつ作用や抗不安作用があると考えられています。
SNRI
抗うつ薬のことです。
Serotonin Noradrenaline Reuptake Inhibitorの略称です。
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬のことです。
1度放出されたセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで神経細胞と神経細胞の間のセロトニン濃度とノルアドレナリン濃度を上昇させて、情報伝達を増強させます。
神経伝達がスムーズになるため抗うつ作用や抗不安作用があると考えられています。
NaSSA
抗うつ薬のことです。
Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressantの略称です
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬のことです。
中枢神経の「シナプス前α2-自己受容体」「ヘテロ受容体」を遮断することでノルアドレナリンとセロトニンの情報伝達が増強されます。
さらに抗うつ作用に関連する受容体を選択的に活性化させるため抗うつ作用や抗不安作用があると考えられています。
三環系
抗うつ薬のことです。
第一世代と第二世代の三環系の薬剤があります。
第一世代は初期に開発された薬剤で高い抗うつ作用が期待できましたが副作用も強くありました。
第二世代は第一世代と比べると副作用が弱いです。
1度放出されたセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで神経細胞と神経細胞の間のセロトニン濃度とノルアドレナリン濃度を上昇させて、情報伝達を増強させます。
神経伝達がスムーズになるため抗うつ作用や抗不安作用があると考えられています。
四環系
抗うつ薬のことです。
三環系と比べると作用や副作用はマイルドになっています。
1度放出されたノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで神経細胞と神経細胞の間のノルアドレナリン濃度を上昇させて、情報伝達を増強させます。
中枢神経の「シナプス前α2-自己受容体」を遮断することでノルアドレナリンの情報伝達が増強されます。
神経伝達がスムーズになるため抗うつ作用や抗不安作用があると考えられています。
増強療法
抗うつ薬による適切な治療をしても効果が十分に得られない時に用いられます。
他の薬剤を併用することで抗うつ薬の効果を増強します。
- 気分安定薬
- 非定型抗精神病薬
など
その他の治療薬
うつ病の症状に合わせて使われる薬剤があります。
- 抗不安薬
- 睡眠薬
など
4).精神療法
認知行動療法
思考理論上の誤りに修正をすることを目的とする療法のことです。
ここでの認知行動療法は「認知療法」「行動療法」を含めた広義の意味で使用しています。
認知療法
認知とは精神医学的には「理解」「判断」「論理」など知能に類似した意味で、心理学では「知覚」「判断」「想像」「推論」「決定」「記憶」「言語理解」といったさまざまな意味があります。
つまり「その人の考え方」のことです。
物事の捉え方や受け取り方はその人の考え方によって違います。
その人の考え方は「感情」「行動」は密接に関係しています。
その人の考え方を柔軟にすることで「感情」「行動」を変えてストレスを軽減していく療法です。
暴露療法
エクスポージャー法とも言います。
学習理論の「慣れ」の原理を応用した療法のことです。
「苦手」「不安」などの状況を、レベルの低いものから高いものへ段階を作ります。
レベルの低い状況から徐々に経験し慣れていく治療方法です。
倫理療法
理性感情行動療法とも呼ばれます。
感情は心理的問題や生理的反応は出来事をどのように受け取ったかという「認知」により生じます。
出来事の受け取り方を変容させることで認知が変わり感情を適切なものに近づける療法です。
ABC理論やABCDE理論があります。
- A:Activating event「出来事」
- B:Belief「受け取り方・信念」
- C:Consequence「結果・感情」
- D:Dispute「Bに対する反論」
- E:Effect「Dによる効果」
出来事「A」があり受け取り方「B」によって感情「C」があります。
受け取り方「B」が不適切である場合、出来事「A」は誤った解釈になり不適切な感情「C」となります。
受け取り方「B」を修正したり、反論「D」をすることで適切な感情「C」に近づけます。
自己教示訓練
自分自身で言い聞かせ、自己暗示をすることで適切な行動ができるようにする療法です。
例えば「できる」と自己暗示をかけることでその行動ができるようになります。
自己暗示の方法は「声に出す」「心の中の声」など言葉を使って行います。
要素は4つあります。
- モデリング
- 行動リハーサル
- 段階的な練習
- 社会的強化
まずは指導者が患者に課題が獲得できる行動「正しい行動」について見本「モデリング」を見せます。
次に指導者と患者が同じ課題について予行練習「行動リハーサル」をします。
行動リハーサルで患者ができるようになったら患者だけでその課題を徐々に獲得できるように「段階的な練習」をします。
日常生活で獲得した「正しい行動」ができることで与えられる「社会的強化」をしていきます。
問題解決療法
問題を抽出して解決する方法を考えて行動することで問題を解決する療法です。
思い込み「認知の歪み」がある場合は問題提起や目標設定を正しくできない可能性が高いためうつ状態がある程度安定していることが必要です。
1人で問題を解決することは難しいため複数人で考えることが望ましいです。
要素は5つあります。
- 問題提起
- 目標設定
- 解決策思案
- 意思決定
- 実行・評価
自分やその周りにある問題を書き出して問題を認知「問題提起」します。
問題提起に対して「どうしたいか」「どうなりたいか」を考えて「目標設定」をします。
どうすればその目標を達成することができるのか「解決策」「代替え案」を考えます。
解決策や代替え案などについて「メリット」「デメリット」を考えてどの方法で解決していくかを選びます。
選んだ解決策や代替え案を実行し評価します
マインドフルネス認知療法
過去の経験や先入観での考えてではなく、自分の「考えていること」「感じていること」「身体の状態」など今の自分に意識を向けて心を整える療法です。
楽な姿勢で瞑想して今にあるがままの自分を感じ取ります。
雑念が出てきても「雑念を考えている」「雑念を気にしている」と今の自分のことを感じとります。
リラクゼーション法
まとめてあるのだ
対人関係療法
家族や友人など、その人にとって関わりのある他者との関係性が自分の気持ちにどのような影響を与えているのかを考えて自尊心を高めていく療法のことです。
初めは両親や兄弟など関係性が「重要」である他者だけに対象を絞ります。
対象者との人間関係が自分にどのように影響しているかを理解して、対処方法を考えていきます。
5).その他
- 運動療法
- 高照度光療法
- 修正型電気けいれん療法
- 経頭蓋磁気刺激
6、抗うつ薬による副作用
1).初期
「SSRI」「SNRI」の薬物療法を始めた初期に出現しやすい副作用です。
約2週間で改善されることが多いです。
- 吐気
- 嘔吐
- 食欲不振
- 下痢
- 頭痛
など
2).自殺
抗うつ薬を内服することで自殺念慮や自殺企図があらわれるリスクが高いため注意が必要です。
- 躁転
- 自殺念慮の症状がある
- 既往に自殺念慮や自殺企図がある
- 若年成人
など
3).事故
自動車運転などの危険を伴う機械操作により事故を起こす可能性が高くなります。
- めまい
- 眠気
など
4).セロトニン症候群
薬物療法の開始や用量変更による増量から24時間以内に出現することがほとんどです。
その内、約60%は6時間以内に出現すると考えられています。
薬物療法の中止でほとんどの場合は24時間以内に副作用は消失します。
- 不安
- 興奮
- 錯乱
- 昏睡
- 軽躁
- せん妄
- 多動
- 頭痛
- 頻脈
- 高血圧
- 高体温
- 発汗
- 悪寒
- 振戦
- 嘔吐
- 下痢
- 筋緊張亢進
- 筋強剛
- ミオクローヌス
- 反射亢進
- 伸展性足底反応
- 協調運動障害
など
重大な合併症
- 代謝性アシドーシス
- 横紋筋融解症
- けいれん発作
- 急性腎不全
- 播種性血管内凝固症候群
など
5).悪性症候群
急激に重篤な症状が出現します。
死亡率は4〜10%とばらつきがあります。
命に関わる副作用なのだ
- 37.5℃以上の発熱「原因不明」
- 錐体外路症状
- 頻脈
- 頻呼吸
- 血圧上昇
- 筋肉痛
など
6).賦活症候群
「SSRI」「SNRI」の薬物療法開始や用量変更による増量から2週間以内に出現することが多いです。
症状の出現で薬物療法の減量や中止をします。
抗不安薬や抗精神病薬が有効です。
- 不安
- 焦燥
- 不眠
- 敵意
- 衝動性
- 易刺激性
- アカシジア
- パニック発作
- 軽躁
- 躁状態
- 自傷
- 自殺企図
など
7).抗うつ薬中断症候群
抗うつ薬の減量や中断した時に出現するリスクが高くなります。
中断2日前後から始まり1週間程度継続します。
- 頭痛
- 吐気
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 不眠
- 運動失調
- めまい
- 立ちくらみ
- 感覚異常
- アカシジア
- パーキンソン症候群
- ミオクローヌス
- 神経過敏
- 不安
- せん妄
- 混乱
- 妄想
- 幻覚
など
8).高コリン作用
三環系や四環系の抗うつ薬に出現しやすく、特に三環系の抗うつ薬はリスクが高いです。
- 眼圧上昇
- めまい
- 悪心
- 動悸
- 口渇
- 食欲不振
- 便秘
- 排尿困難
- 不眠
など
7、看護のポイント
1).うつ症状
うつ状態により日常生活に支障をきたしているかを観察します。
日常生活に支障をきたしていれば援助をします。
日常生活に支障「きたす」「きたさない」の判断はかなり難しく、その患者の性格によることもあります。
例えば、洗濯など自分でも「めんどくさい」と思うことは患者も同じように思います。
めんどくさくてできないのか、うつ状態でできないのか、しっかりと問診して判断する必要があります。
2).経過
患者が現在どの時期なのかを治療開始日や症状から推測します。
その時期に適した援助をします。
3).病識
うつ病が「どのような病気なのな」「治療をする中での注意は何か」などを患者自身が理解することで再発率を減らすことができます。
特に再発率が高い理由として薬剤の自己中断があるため、自己中断するリスクを知ってもらう必要があります。
他にも治療が長期になることやうつ病の予後を知ってもらうことも大切です。
疾患教室など開催していれば参加することを勧めます。
4).治療
うつ病の治療は「休養」「環境調整」「薬物療法」が基本です。
休養ができているか、環境調整ができているか、薬剤療法を継続できているかを観察します。
できないことに対して援助していきます。
5).気分転換
ストレスを発散できる方法を一緒に考えます。
リラクゼーションなどの活動があれば参加することをお勧めします。
- 入浴
- 瞑想
- 音楽
- 映画
- カードゲーム
- ボートゲーム
- TV
- 創作
- 料理
- 食事
など
6).薬剤の副作用
なんらかの副作用はかなりの確率で出現します。
薬剤療法がいつから始めたのか、内服している薬剤は何かを必ず確認します。
副作用は患者ごとに違うため観察だけでなく問診も必ずします。
特に命に関わる副作用は早期発見と報告が大切になります。
7).社会適応能力
社会で生活できるかを評価します。
うつ状態が良くなっても残遺症状により「セルフケア能力」「ADL」「IADL」などが低下していると社会生活を送ることは難しくなります。
また、希死念慮についても観察します。
退院後に自殺を図る患者がいるため注意が必要です。
8).社会資源
社会適応能力が低くても社会資源を使うことで社会生活を送れる可能性が高くなります。
社会生活をする上で何が必要なのかアセスメントします。
9).家族や周囲の人の理解
うつ病は「怠け者」などと間違われることが多いです。
「病気であること」「適宜休養が必要であること」などを家族や周囲の人に理解してもらうことが重要です。
退院後の生活がうつ病をひき起こした環境と同じであれば整える必要があります。
8、看護計画
下記の項目から対象者を当てはめ、必要な項目を詳しく考えていきます。
1).O-P
身体症状
- 体温
- 脈拍
- 血圧
- 呼吸
- うつ病の症状やその変化
- 原因や誘引の有無
精神症状
- 発言内容
- 表情
- 希死念慮の有無
- 自殺企図の有無
- 妄想の有無
生理的状態
- 排尿
- 排便
生活因子の状態
- 食事摂取量
- 水分摂取量
- 補食の有無
- 喫煙の有無
- 飲酒の有無
- 睡眠状況
- 活動と休息のバランス
治療に関すること
- 治療方法の効果
- 診察や検査結果からの変化
- 治療や検査など患者「家族」の思い
- 治療に対する意欲
〜薬剤の副作用〜
- 初期「2週間以内」
- 躁転
- セロトニン症候群
- 代謝性アシドーシス
- 横紋筋融解症
- けいれん発作
- 急性腎不全
- 播種性血管内凝固症候群
- 悪性症候群
- 賦活症候群
- 抗うつ薬中断症候群
- 抗コリン作用
2).T-P
日常生活の援助
自分でできる方であれば日常生活の援助はあまり必要ありませんが「身体的理由」「精神的理由」「病識欠如」「意欲低下」などの理由でできない方は援助をしていきます。
- 洗面
- 口腔ケア
- 整容
- 食事
- 排泄
- 入浴
- 清拭
- 更衣
- 整理整頓
その他の援助
- 傾聴
- ストレスの発散方法
- 環境の調節
- 排便コントロール
- 排便習慣の確立
- 服薬状況の管理
- 不穏時を促す
- 不眠時を促す
- 金銭管理
- 私物管理
- 職場、学校、自宅などの環境調整
3).E-P
- 病識の獲得
- 適性体重
- 活動と休息のバランス
- 節酒や断酒
- 禁煙
- 規則正しい生活習慣
- 薬物療法の必要性
- 薬剤による副作用
- うつ病の症状の報告をしてもらう
- 精神療法
- 退院後の生活に必要な能力の獲得
- 社会資源の活用
4).ポイント
- 合併症の予防や早期発見できる観察
- 実践可能な立案
- 個別性な立案
- 生活習慣に合わせた指導内容
- 薬剤の副作用に合わせた指導内容
- 原因となる因子の排除に向けた計画内容
- 自立に向けた援助や指導内容
- 退院後の生活における社会資源の活用