看護学生の頃に記録を書くのに悩むことがありました。「色々とまとめてるのものがあればっ!」と思っていたのでまとめました。
1、レビー小体型認知症とは
認知症とはなんらかの原因により認知機能が低下することで日常生活に支障がある状態になります。
認知症の中で2番目に多いのがレビー小体型認知症になります。
発症は高齢者に多いいですが、30〜50歳で発症することもあります。
また、比較的、男性に多いとされています。
1).原因
中枢神経にレビー小体という異常な構造物ができて溜まることが原因です。
レビー小体は大脳皮質の神経細胞内に多く出現し、神経細胞の破壊や変性をさせることで様々な症状が出現します。
レビー小体
主にαシヌクレインというタンパク質で、できていますが、他にも多くのタンパク質が集まった凝集体のことです。
2).危険因子
危険因子については詳しくわかっていませんが、関連があると考えられているものは次のことです。
- 不安障害
- うつ病
- カフェイン
- 夜間頻尿
- レム睡眠行動障害 など
2、経過
レビー小体型認知症の進行は「早い」とされています。
ただ、個人差があるため一概に進行が早いとは言い切れませんが、初期の状態から10年未満で「常に日常生活の介助が必要になる」ことが多くあります。
1).初期
初期の症状はうつや便秘、嗅覚異常、レム睡眠行動障害が出現することが多くあります。
また、「元気がない」「判断力、理解力がなくなってきている」と思うことはあるが、時間や場所を把握していたりコミュニケーションに問題がない場合が多く、目立たないことが多くあります。
その後、起立性低血圧や幻視、パーキンソン症状が徐々に増え、次第に幻覚「特に幻視」や妄想などが目立ってきます。
認知機能は比較的保たれますが、しっかりしている時とぼーっとしている時と変動します。
変動は数時間や1日おきの時もあれば1週間、1ヶ月の時もあります。
2).中期
中期の症状は、初期症状の変動が大きくなり様々な症状が悪化して病状が進行します。
悪化している時間が長くなるため「コミュニケーションが図れない」「もの忘れ」などがひどくなる時間帯が増えます。
特にパーキンソン症状の悪化は転倒リスクが高くなるため注意が必要です。
幻覚や妄想の悪化では日常生活を送れなくなり介護が必要になることが多くあります。
認知機能障害も目立つ様になり、時間帯により大きく変動し、夕方頃から悪化する傾向にあります。
3).末期
認知機能障害やパーキンソン症状など、さらに悪化します。
疎通性も悪化しコミュニケーションが困難になります。
また、パーキンソン症状や自律神経症状などにより歩行は困難となります。
そのため、車椅子が必要になる方が多く、歩行できたとしても「ちょっとした段差でつまずく」「自律神経症状によるふらつきや立ちくらみ」などにより転倒するリスクはかなり高くなります。
中には、ベッドから転落するリスクが高くなる方もいます。
認知機能では常に悪化した状態が続き、良い状態への変動がほとんどなくなります。
嚥下障害が悪化することもあり、誤嚥性肺炎のリスクも高くなります。
幻視の訴えは少なくなる方がいますが、パーキンソン症状や転倒、誤嚥性肺炎などが原因で寝たきりとなり、衰弱し死亡に至ることが多くあります。
3、レビー小体型認知症によるリスク
1).ADL低下
末期では寝たきりになることが多く活動性が低下して歩行障害や嚥下障害などのリスクが高くなります。
2).転倒
レビー小体型認知症はパーキンソン症状や自律神経症状などにより転倒しやすい内的要因が症状としてあります。
さらに外的要因があると転倒リスクは高くなるため「転倒による外傷」「寝たきりのきっかけ」など今後の影響が大きくなります。
内的要因
加齢や疾患、薬物などにより身体になんらかの変化あるためリスクが高くなる要因のことです。
内的要因となる原因は個別性が強く様々な要因があるため、ここに記載している以外にも多くあります。
1、加齢
- 筋肉量減少
- 持続力低下
- 反応・反射速度低下
- 巧緻性低下
- 平衡感覚低下
- 姿勢保持困難 など
2、疾患
- パーキンソン症状
- 自律神経症状
- 循環器系
- 神経系
- 筋骨格系 など
3、薬物
- 睡眠薬
- 抗精神病薬
- 降圧剤
- 強心薬
- 抗パーキンソン病薬 など
外的要因
履物やズボンなど身につけているものや床に置いてある荷物や段差など、転倒しやすい環境によりリスクが高くなる要因のことです。
- 衣類
- ズボン
- 履き物
- 環境
- 段差
- 滑りやすい
- 荷物
- コード類
- 照明不足
3).誤嚥性肺炎
気管や肺に誤って唾液や飲み物、食べ物などが入り込むことを誤嚥と言います。
細菌なども一緒に入り込みます。
感染や異物により肺が炎症を起こすと誤嚥性肺炎になります。
4、症状
1).認知機能障害
理解や判断、倫理などの知的機能が障害された状態です。
この知的機能が障害されると様々な症状が出現します。
詳しくまとめてあるのだ
2).幻覚
幻視
現実には見えない「人」「動物」「虫」「建物」「文字」「光」「色」などが見える状態です。
見えるものの個人差はありますが、初期症状から出現することが多く、幻視により不安や興奮などの症状が出現することがあります。
幻聴
現実には聞こえない「音」「声」などが聴こえる状態です。
「単純」「複雑」な音や「1人」「数人」「大勢」の声など色々あります。
幻聴は耳から聞こる以外に「腹部」や「直接脳に届く」など聞こえ方は色々あります。
他にも詳しく知りたい方はこちらをどうぞ
3).錯視
見ているものを違うものに認識する状態です。
例えば、「小さなゴミを虫」「壁の絵を人」「床の線を障害物」などがあります。
また、周囲のものが「歪む」「曲がる」などの変形視の症状が出現する方もいます。
4).パーキンソン症状
主な症状として四大症状があります。
安静時振戦
パーキンソン病の振戦は、安静時や静止時に手足や顎、唇などの部位が自分の意思とは関係なく振える状態です。
意識的に身体を動かす動作や睡眠の時は振戦が抑えられます。
寡動・無動
筋肉の低下や麻痺などがないのに、動作が遅くなる状態です。「寡動」
動作の開始が遅い、動きが少ない、歩く速度が遅い、小さな動きになる、表情が乏しいなどがあります。
寡動が進行すると、動くことができない状態になります。「無動」
精神状態により動きの速度に変化があり、例えば気持ちが高ぶっているときに素早く動くことができることがあります。
- すくみ現象
- 小刻み歩行
- 仮面様顔貌
- 小字症
- 小声症
- 嚥下障害 など
固縮「強剛」
筋の緊張が亢進している状態です。
他動運動による屈伸をするとスムーズに動かすことができず抵抗を感じます。
- 歯車様固縮:ガクガクと断続的な抵抗
- 鉛管様固縮:持続的な抵抗
姿勢反射障害
体が傾いた時に「重心を移動」「足を踏み出す」など、転倒しないようにバランスをとる動作が障害された状態です。
倒れそうになっても姿勢を直すことができない、歩き出すと止まれない、姿勢が斜めに傾くなどがあります。
詳しくはこちらに記事をどうぞ
5).自律神経症状
- 便秘
- 排尿障害
- 起立性低血圧
- 発汗障害 など
詳しくはこちらに記事をどうぞ
6).うつ症状
- 抑うつ気分
- 何をしても楽しくない
- 何に対しても興味がわかない
- 疲れているのに寝れない
- 1日中眠い
- かなり早く目覚める
- イライラ
- 何かに急き立てられ落ち着かない
- 何もしていなのに罪悪感を感じ自分を責める
- 自分を無価値だと思う
- 思考力低下
- 希死念慮 など
詳しくはこちらに記事をどうぞ
7).レム睡眠行動障害
軽い症状としては次の状態です。
- 会話の様な寝言
- 手足を動かす
- 何かを食べる動作
- 何かを書く動作
- 笑う など
重い症状としては次の状態です。
- 大声をだす
- 起き上がり歩き出す
- 近くの物や人を殴る、蹴る
- 物を投げる など
詳しくまとめてあるのだ
8).妄想
嫉妬妄想が多く、幻視に基づく妄想が多いです。
他にも物盗られ妄想などがあります。
5、検査
- 改訂長谷川式簡易知能評価スケール「HDSーR」
- ミニメンタルステート検査「MMSE」
- ABC認知症スケール「ABCーDS」
- CT
- MRI
- 脳血流SPECT
- 糖代謝PET
- ドパミン トランスポーターシンチグラフィ
- MIBG心筋シンチグラフィ
6、治療
完全に治す治療法はまだありません。
- 薬物療法
- リハビリテーション療法
- 回想療法
- 音楽療法
- 芸術療法
- アニマルセラピー
7、看護ポイント
1).物忘れとの違い
物忘れ | 認知症 | |
記憶 | 一部 | 全体 |
自覚 | ある | ない |
日常生活 | 支障ない | 支障ある |
進行 | ゆっくり進行 | 進行 |
2).薬物療法
レビー小体型認知症の治療は確立されていません。
症状も個別差があるため、その症状に対して治療をします。
- 認知機能障害:抗認知症薬
- BPSD:非定型抗精神病薬
- パーキンソン症状:抗パーキンソン薬
- レム睡眠行動異常:不眠症治療薬
- うつ症状:抗うつ薬
- 便秘:緩下剤 など
レビー小体型認知症の特徴として、薬物への過敏性が高いです。
薬剤の効果が想定外に効いたり、認知機能低下により過剰に薬剤を内服することもあります。
これらにより、症状が悪化したり副作用が出現するリスクが高いため、薬剤の管理や薬剤を内服後の観察が必要になります。
3).環境調整
室内環境をシンプルにして照明の明るさを一定に保つことで、幻視の予防になります。
また、床の模様をシンプルにしたり、バリアフリーにすることで、錯視や外的要因による転倒や転落を予防することができます。
4).コミュニケーション
認知機能障害があると、記憶としてコミュニケーションをしたことは覚えていないかもしれませんが、感情は残りやすいです。
そのため、「責める」「怒る」などネガティブな言動は控えるようにします。
穏やかな口調でポジティブでわかりやすい言葉を使い話すようにします。
相手が感情的になって責めてくる時は距離を置いて刺激の少ない場所で1人にすると効果的です。
関わり方として次のような方法があります。
まとめてあるのだ
5).自立を促す
日常生活を送る上で、できることはやってもらいます。
トイレや洗面所などの場所はわかりやすいように案内や目印をつけると、自分で移動することができます。
料理や洗濯などはできる能力があればやってもらいます。
自立を促しますが、何ができて何ができないのかを知ることが大切です。
できることでも危険性を考えて「1人で大丈夫なこと」「見守ること」「介助が必要なこと」に分けて自立度を把握します。
注意として自立を促し過ぎると逆効果になるため、本人のペースや状態に合わせて無理のないようにサポートすることが大切です。
6).不安を取り除く
記憶障害や見当識障害などにより色々な不安が出現します。
不安は間違いの指摘や否定により強くなります。
特に幻覚や妄想などによる訴えは、否定してしまいそうになるため注意が必要です。
穏やかな声かけやその場で話を合わせるなど、安心感を与えるようにします。
幻覚や妄想の不安を取り除く方法は、幻覚妄想に対して何もないことを一緒に確認すると安心感を与えることができます。
一緒に確認できない内容は共感をして安心感を与えます。
7).強制はしない
レビー小体型認知症の方は自分が認知症であるという自覚はあまりありません。
そのため「拒薬」「介護拒否」などが多くあります。
この場合、無理に行うと被害妄想が出現してさらに拒否が強くなる可能性があるため無理に行いません。
タイミングを変えたりポジティブなことを伝えて根気よく関わります。
8).理由を知る
拒否をする理由を聞きます。
本人が困っていることを解決すると拒否がなくなる可能性があるため、一緒に解決をします。
9).安全対策
「床に荷物を置かない」「手すりの設置」「足元に照明」など工夫して転倒を予防します。
レビー小体型認知症では、徘徊の症状の出現率は低いですが、無いわけではありません。
徘徊の危険を防ぐため「玄関にセンサーを設置」「衣類に連絡を書く」「GPSの活用」などで対応します。
他にも異食など危険な行動をがある場合は、その行動が出現しても生命に危険がないように環境を整えます。
10).生活リズム
レビー小体型認知症の方は30〜50歳で発症することもありますが、基本的には高齢であることが多く、加齢や見当識障害により昼夜逆転しやすい状態です。
また、レム睡眠行動障害も昼夜逆転の原因となるため注意が必要です。
昼夜逆転は夜間徘徊となるリスクがあるため、日が昇っている時は日光浴や散歩などを促します。
また、夜間は「照明の明るさ」「温度や湿度」「寝具」など眠りやすい環境を提供します。
11).栄養状態の把握
レビー小体型認知症は自発性や活動性の低下、不安、うつなどの出現により食事や水分を摂っていないことがあります。
また、幻視や錯視により食事摂取ができない場合もあります。
栄養状態の悪化や脱水に注意する必要があります。
体重を測定したり飲水量を観察します。
12).自動車の運転
自動車を運転する危険性はとても強く、本人だけではなく他人の生命も脅かすため運転できないようにする必要があります。
しかし自動車はとても便利でポジティブな感情が残っているため、運転できない環境にすると怒る場合があります。
本人が納得できるように話を進めることが重要ですが、それでも上手くいかない時は友人や専門医など第三者の力を借ります。
13).活動
運動不足になりやすいため散歩やラジオ体操、ストレッチなどをして筋力を維持して転倒予防をします。
また、運動は脳の刺激になるため症状悪化の予防を期待できます。
運動以外でも頭や指を使うことをして過ごします。
「日記を書く」「パズル」「塗り絵」「折り紙」など興味のある物や好きな物をして過ごしてもらいます。
コミュニケーションも有効であるため声をかけたり、電話を活用して声を出す機会を増やす工夫が必要です。
14).社会資源の活用
レビー小体型認知症の方の介護はとても疲れます。
家族であるからこそ強く責められたり、拒否することがあるため、社会資源を利用して第三者の力を借ります。
介護者がひどく疲れている時はレスパイト入院させることも必要になります。
レスパイト入院は本人を入院させることで介護者の休息を図ることを目的とした入院なのだ
15).家族の受け入れ
介護が大変で退院できない理由の多くは家族の受け入れにあります。
受け入れが悪い理由は多くあります。
家族が受け入れたくない理由
- 過去に酷い目にあった
- 状態は落ち着いているけど前の状態に戻ったら怖い
- 入院などの機会により患者さんの居ない生活がとても過ごしやすい
- 兄弟姉妹であり面倒をみたくない
- 近所に知られるのが恥ずかしい など
退院後の生活をどうしていくのか、本人と家族の希望を聞いて退院先を思案します。
家族が強い拒否を示す場合には、施設への退院となることが多いです。
8、看護計画
下記の項目から対象者を当てはめ、必要な項目を詳しく考えていきます。
1).看護目標
レビー小体型認知症の症状や状態は個別性が強く、看護目標も色々と考えることができます。
問題やストレングスに注目して達成可能な目標を患者さんと一緒に話して決めます。
- 環境の変化に慣れて落ち着いて入院生活が送れる
- ベッドからの転落や転倒をすることなく過ごすことができる
- 食事や水分摂取ができ身体状態を良好に保つことができる
- 治療や検査を拒否することなく受けることができる
- 幻視や錯視に精神状態が左右されず、日常生活が送れる
- 精神状態の悪化により易怒性が出現する時は不穏時を内服することができる
- 病棟の活動やレクレーションなどに参加することができる
- 排泄をトイレですることができる
- 精神状態が悪化することなく穏やかに日常生活を送ることができる など
2).O-P
身体症状
- 体温
- 脈拍
- 血圧
- 呼吸
- 症状やその変化
- ADL
- 歩行状態
精神症状
- 発言内容
- 表情
- 病識の有無
- 暴言の有無
- 暴力の有無
- 中核症状の有無
- 周辺症状の有無
生理的状態
- 排尿
- 排便
生活因子の状態
- 食事摂取量
- 水分摂取量
- 補食の有無
- 喫煙の有無
- 睡眠状況
- 活動と休息のバランス
治療に関すること
- 治療方法の効果
- 診察や検査結果からの変化
- 治療や検査など患者「家族」の思い
- 薬剤による副作用
3).T-P
日常生活の援助
自分でできる方であれば日常生活の援助はあまり必要ありませんが「身体的理由」「精神的理由」「病識欠如」「意欲低下」などの理由でできない方は援助をしていきます。
- 洗面
- 口腔ケア
- 整容
- 食事
- 排泄
- 入浴
- 清拭
- 更衣
- 整理整頓
その他の援助
- 傾聴
- ストレスの発散方法
- 環境の調節
- 排便コントロール
- 排便習慣の確立
- 服薬状況の管理
- 金銭管理
- 私物管理
4).E-P
- 適性体重の維持
- 活動と休息のバランス
- 禁煙
- 規則正しい生活習慣
- 薬物療法の必要性
- 薬剤による副作用
- 退院後の生活
- 社会資源の活用
- 転倒
- 運動療法
5).ポイント
- 合併症の予防や早期発見できる観察
- 実践可能な立案
- 個別性な立案
- 生活習慣に合わせた指導内容
- 薬剤の副作用に合わせた指導内容
- 原因となる因子の排除に向けた計画内容
- 自立に向けた援助や指導内容
- 退院後の生活における社会資源の活用
家族の負担はとても大きいのだ