看護学生の頃に記録を書くのに悩むことがありました。「色々とまとめてるのものがあればっ!」と思っていたのでまとめました。
人は呼吸をすることで空気の中の酸素を肺に取り込んでいます。
その空気が通る道を「気道」「気管支」などと呼びます。
この病気は名前の通り気管支が拡張する病気なのですが、なぜ拡張するのでしょうか。
何故なのだ?
1、気管支拡張症とは
なんらかの原因で気管支の壁が破壊されて広くなり、気管支が拡張したまま元に戻らない状態のことです。
気管支が破壊されてるのだ
びまん性気管支拡張症と限局性気管支拡張症があります。
1).びまん性気管支拡張症
気道に炎症を起こすことで組織が損傷します。
炎症した部位や損傷した組織に浸潤した「白血球」「マクロファージ」などから放出される生理活性物質を炎症メディエーターと呼びます。
炎症メディエーターは「血管拡張」「白血球の遊走」「組織の破壊」などの作用があります。
そのため炎症メディエーターが放出されている部位の組織「軟骨」「筋肉」などが破壊されます。
破壊されることで気管支が不可逆性の拡張をした状態になります。
病気の進行が進むと、炎症を起こしている周囲の肺実質は線維化します。
びまん性気管支拡張症になる要因として気道クリアランスの障害や慢性的な感染症、慢性的な炎症、自己免疫疾患などがあります。
炎症メディエーターは損傷した組織や炎症部位に浸潤した白血球や肥満細胞、マクロファージなどから生体反応の結果として放出される生理活性物質なのだ
2).限局性気管支拡張症
気道がなんらかの原因で閉塞します。
閉塞により気道にある分泌物が取り除けなくなり感染や炎症,気道壁の損傷といったサイクルを繰り返します。
炎症した部位や損傷した組織に浸潤した「白血球」「マクロファージ」などから放出される生理活性物質を炎症メディエーターと呼びます。
炎症メディエーターは「血管拡張」「白血球の遊走」「組織の破壊」などの作用があります。
そのため炎症メディエーターが放出されている部位の組織「軟骨」「筋肉」などが破壊されます。
破壊されることで気管支が不可逆性の拡張をした状態になります。
限局性気管支拡張症になる要因として非結核性抗酸菌感染によるリンパ節腫脹などがあります。
右肺中葉が最もリスクが高く、理由として右中葉気管支は小さく屈曲しているためリンパ節が近いからと考えられています。
2、原因
先天性疾患や後天性疾患などです。
先天性とは「生まれつき」なのだ
1).先天性疾患
- α1-アンチトリプシン欠乏症
- 線毛機能不全症候群
- 嚢胞性線維症
- 黄色爪症候群
- ウィリアムス・キャンベル症候群
- 気管気管支巨大症
- 肺分画症
- 慢性肉芽腫症
- 補体欠損症
- 低ガンマグロブリン血症
2).後天性疾患
- HIV感染症
- 免疫抑制薬による免疫異常
- リウマチ
- シェーグレン症候群
- 全身性エリテマトーデス
- 炎症性肺疾患
- 炎症性腸疾患
- 再発性多発軟骨炎
- 気管支繊毛運動の機能異常
- 幼少時期の重傷呼吸器感染症
- 中葉症候群
- 気管支異物の長期嵌入
- アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
- 閉塞性細気管支炎
- スワイヤージェームズ症候群
- 塵肺
- 癌
- 腫瘍
- リンパ節腫脹
- 術後変化などに伴うもの
3).その他
- 有毒物質
- アンモニア
- 塩素
- 二酸化窒素
- たばこ
- 細菌
- 百日咳菌
- インフルエンザ菌
- 肺炎マイコプラズマ
- 緑膿菌
- 黄色ブドウ球菌
- クレブシエラ属
- モラクセラ・カタラーリス
- 真菌
- アスペルギルス属
- ヒストプラズマ属
- 抗酸菌
- 結核菌
- 非結核性抗酸菌
- ウイルス
- アデノウイルス
- 単純ヘルペスウイルス
- インフルエンザ
- 麻疹
- RSウイルス
3、気管支拡張症によるリスク
1).肺動脈性肺高血圧症
心臓から肺へ静脈血を送る血管があり、これを肺動脈と呼びます。
肺動脈の血圧が高くなる状態です。
また、肺動脈性肺高血圧症による右心不全を肺性心と呼びます。
肺動脈に流れている血液は静脈血なのだ
2).慢性副鼻腔炎
鼻の中にある空洞が細菌やウイルスなどにより「炎症」「膿の貯留」「粘膜の腫れ」など3ヶ月以上続く状態です。
3).びまん性汎細気管支炎
呼吸細気管支を中心にその周囲に慢性的な炎症が広範囲に分布している状態です。
4).肺炎
肺胞や間質などに細菌やウイルスなどの病原体が感染して炎症を起こした状態です。
誤嚥性肺炎や間質性肺炎などいろいろあるのだ
4、症状
- 多量の膿性痰「濃い緑色の痰」
- 慢性の咳
- 血痰
- 喀血
- 胸痛
- 38℃以上の発熱
- 全身倦怠感や疲労感
- 体重減少
- 息切れ
- ばち状爪
- チアノーゼ
5、検査
- 血液検査
- 胸部XーP
- 胸部CT
- 気管支鏡検査
- 呼吸機能検査
- 気管支動脈造影検査
- 細菌検査
- 動脈血ガス分析
6、治療
1).薬物療法
- 気管支拡張薬
- ステロイド薬
- 去痰薬
- マクロライド系抗菌薬
- 起炎菌に有効な抗菌薬
- 止血薬
- 鎮咳薬
2).手術療法
- 切除術
- 気管支動脈塞栓術
3).呼吸リハビリテーション療法
- 運動療法
- 認知療法
- 体位ドレナージ
7、看護ポイント
1).呼吸測定
安静時に呼吸回数を観察します。
安静時に測定することが大切なのだ
2).呼吸音の観察
聴診は中肺野を中心にします。
粗い断続性ラ音「水泡音」や、まれにキュンというスクウォークやグーグーといういびき音が聴こえます。
聴診器は膜型を使うのだ
3).チアノーゼの観察
SPO2値だけではなく爪や唇も観察します。
手足の指先の冷感も観察するのだ
4).症状の観察
自覚している症状を問診したり客観的に観察できる症状を観察します。
治療方法の効果や薬剤の副作用の観察もします。
薬剤の副作用を知るのだ
5).原因や誘引の有無
- 先天性
- 後天性
- 生理的・生活因子
- 生活習慣
- 既往歴
- 家族歴
- その他
6).たばこ
たばこを吸うと有害物質により気管支が傷つきます。
そのため気管支が拡張する要因となるため禁煙をします。
たばこについて詳しくまとめてあるのだ
7).喀血
大量の喀血では血液が気道をふさぎ窒息する可能性があります。体位は必ず患側を下にします。
8、看護計画
下記の項目から対象者を当てはめ、必要な項目を詳しく考えていきます。
1).O-P
身体症状
- 体温
- 脈拍
- 血圧
- 呼吸
- 呼吸音「ゴロゴロ」「ブクブク」「ブツブツ」「キュン」
- チアノーゼの有無「爪」「唇」「SPO2」
- 排痰の有無「量」「色」「性状」
- 気管支拡張症の症状やその変化
- 原因や誘引の有無
- 術後の経過
精神症状
- 発言内容
- 異常行動
生理的状態
- 排尿
- 排便
生活因子の状態
- 食事摂取量
- 水分摂取量
- 補食の有無
- 喫煙の有無
- 飲酒の有無
- 睡眠状況
- 活動と休息のバランス
治療に関すること
- 治療方法の効果
- 診察や検査結果からの変化
- 治療や検査など患者「家族」の思い
- 薬剤による副作用
- 酸素療法によるリスク
環境因子
- 粉塵がある職場
- 化学薬品を扱う職場
2).T-P
日常生活の援助
自分でできる方であれば日常生活の援助はあまり必要ありませんが「身体的理由」「精神的理由」「病識欠如」「意欲低下」などの理由でできない方は援助をしていきます。
- 洗面
- 口腔ケア
- 整容
- 食事
- 排泄
- 入浴
- 清拭
- 更衣
排痰
- 体位ドレナージ
- スクイージング
- ハフィング
その他の援助
- 環境の調節
- 体位の調節
- 感染予防対策
- 服薬状況の管理
- 呼吸リハビリテーションの実践
3).E-P
- 食事療法
- 運動療法
- 禁煙
- 規則正しい生活習慣
- 薬物療法
- 気管支拡張症の症状の報告をしてもらう
- 退院後の生活
4).ポイント
- 症状の増悪を早期発見できる観察
- 実践可能な立案
- 個別性な立案
- 生活習慣に合わせた指導内容
- スタンダードプリコーションを取り入れた内容
- 呼吸リハビリテーションに合わせた実践や指導内容
- 薬剤の副作用に合わせた指導内容
肺炎を繰り返すと炎症により気管支拡張症が悪化するのだ