SSTとはどのようなことでしょうか。SSTを実施する時はどうしたら良いのでしょうか。
実際やってみると難しいのだ
1、SSTとは
ソーシャルスキルトレーニング「Social skills training」のことです。
診療報酬では「入院生活技能訓練療法」と呼びますが一般的に生活技能訓練と呼ばれることが多いです。
社会生活で必要な技能を訓練することで対象者の希望に基づき人との関わり行動をより適切で効果的に行うことができるように手助けをします。
学習理論や行動理論に基づく技法を用いて体系的、意図的に対象者の技法形成を図る構造化された方法です。
行動に比重を置いた認知行動療法です。
社会生活は円滑に送れるようになりたいのだ
1).入院生活技能訓練療法
人が地域社会で自立して円滑に生活できるように援助するひとつの方法のことです。
2).Social
「社会の」「社交の」「社会的」「社交的」などの意味です。
3).skills
「技能」「技術」「技量」などの意味です。
4).training
「訓練」「練習」「鍛錬」などの意味です。
2、SSTの考え方
対象者の希望を大切にして応援します。「希望志向」
問題点を「標準」に合わせるのではなく魅力やストレングス「強み」を引き出して良いところを伸ばします。
環境や周りの人との関わりを持つことが大切になります。
職員の関わり方が大切なのだ
1).標準とは
人間は生まれてから大人になるまで色々なことを学びます。
知識以外に「コミュニケーション方法」「言語」「立ち振る舞い」など自然に身についていると思うことも「父」「母」「友達」など、周りにお手本があるからできるようになります。
自然に身につくものではなく学習して身につくものになります。
私たちが普段、気にせずにしていることを「標準」と考えます。
自然に学習して身につくことが「病気」「障害」「環境」などにより、身につけることができなかった対象者にとっては標準はハードルが高く感じます。
自分が簡単にできることでも対象者にとっては難しいのだ
3、SSTの訓練
1).認知の訓練
注意焦点付け訓練
情報を正確に受け取り状況を理解する訓練のことです。
受け止める「受信技能」訓練になります。
問題解決技能訓練
情報を整理して適切な選択肢を考える訓練のことです。
考える「処理技能」訓練になります。
2).行動の訓練
基本訓練モデル
選択した考えを言語や行動で表現する訓練のことです。
伝える「送信技能」訓練になります。
SSTの構成要素
1、教示
- 「画像」「絵」「言葉」などで直接学ぶ
2、モデリング
- 「動画」「お手本」などで見て学ぶ
3、リハーサル
- 実際にやって学ぶ
4、フィードバック
- 振り返って学ぶ
5、般化
- 実際の場面でできるようになること
- 般化できるようになるためには「フィードバック」をして繰り返し「教示」「モデリング」「リハーサル」を何度も繰り返して学ぶ
般化「はんか」と読むのだ
4、原理
1).モデリング
モデルの観察を通じて行動を学習します。
マスタリーモデル
完璧なモデルのことです。
コーピングモデル
対象者にとって「できるかもしれない」と焦点付けをしたモデルのことです。
2).強化
行動に対して好ましい結果を与えることです。
正の強化
行動の結果として価値があり望みとなる強化のことです。
- 褒められる
- お金などの報酬がある
- 拍手される
- 感謝される
負の強化
行動の結果として不快な刺激を取り除いたり減少させる強化のことです。
- 批判
- 不安
3).行動形成
望む目標に向けて連続してステップを踏み強化をすることです。
4).過剰学習
ある行動が自然にできるようになるまで繰り返して学習することです。
5).般化
獲得したスキルを実際の場面できるようになることです。
5、SSTの実戦方法
SSTの実戦方法は色々な種類がありますが基本訓練モデルの実戦方法についてみていきます。
1).基本訓練モデル
ロールプレイ「寸劇」を行い行動の「良い点」「できている点」に注目して行動の修正やスキルの獲得を目指します。
職員は堂々と寸劇をするのだ
基本的なスキルの獲得
1、初級
あいさつや自己紹介ができることです。
また、上手に質問をして相手を知ることです。
2、中級
グループへ入る「入ってもらう」ためのコミュニケーションができることです。
また、相手の気持ちをわかり、不快にさせないためのコミュニケーションができることです。
3、上級
自分を大切に考えて行動ができることです。
また、不快にさせないコミュニケーションで依頼をしたり、逆に頼まれたことを断ったりすることです。
2).SSTの流れ
確認「約2分」
SSTや目的やルールを読み上げます。
「あいさつをしましょう」「相手の話をちゃんと聞きましょう」などの目的や「答えれない時はパスできます」「席を離れる時は一言断ってから」などのルールを決めておきます。
紙「ポスター」などにあらかじめ印刷しておきます。
自己紹介「約3分」
「名前」以外に「好きな食べ物」「好きな色」など1つ発表してもらいます。
まずは職員が見本を見せるのだ
ウォーミングアップ「約20分」
ゲームなどして緊張をほぐします。
「しりとり」「絵しりとり」「連想ゲーム」「好きな物当てゲーム」などをします。
実際の場面での活用「約5分」
ロールプレイで擬似体験したことを実際の場面でも使もらいます。
その結果があれば簡単に発表してもらいます。
ロールプレイの前準備「約5分」
「困っていること」「やりたいこと」「体験したいこと」など対象者から聞き出します。
その中でロールプレイをするものを決めます。
- 例
- Aさんに謝りたい
- 映画を観たい
- 買い物をしたい
選定するのだ
ロールプレイ「約15分」
目標を設定します。
対象者から場面を詳しく聞きいて、目標に向けて対象者がどのようにしたら良いのかみんなでアイデアを出し合います。
アイデアの中で対象者が行動できそうなことを2個程度選んでもらいます。
職員が目標に対して行動するアイデアを使いロールプレイを見せます。
次に職員のロールプレイを参考にして対象者がロールプレイをします。
- 例「Aさんに謝りたい」
- 目標:Aさんに「ごめんなさい」と言う
- 場面:TVのチャンネル争いをして2日経ち、Aさんは廊下を1人で歩いている
- アイデア:「クッション言葉を使う」「笑顔で接する」「背後から肩を指でトントン叩いて気付いてもらう」「イスに座って話す」「正しい言葉使いをする」
- アイデアの選定:「クッション言葉を使う」「背後から肩をトントン叩いて気付いてもらう」
振り返り「約10分」
ロールプレイする前にロールプレイに参加しない人に対象者の「良いところ」「できているところ」などを見て欲しいことを伝えます。
ロールプレイ後に対象者の「良いところ」「できているところ」などを周りの人に言ってもらい正の強化を図ります。
対象者にロールプレイをしてみて「どうだったか」「実際の場面でできそうか」などの振り返りをしてもらいます。
次のSSTでどうだったか聞いてみるのだ
6、スキル獲得のポイント
スキルは知識や経験があって初めて身につく技術です。
理論や理屈だけではなくSSTを通して「上手くできた」「役に立てた」「心地よい」など経験の積み重ねがとても大切です。
対象者がその経験を重ねられるように意識的に関わることが大切です。
職員が楽しみながら「自己紹介」「ゲーム」「ロールプレイ」などの見本を見せることが自然とその関わりができるようになります。
みんなで一緒に楽しむのだ