「分娩」は看護師国家試験では必ず出題されています。分娩経過や破水の種類は必ず覚えましょう。
覚えることは多いですが、どれも基本的なことであるためしっかり覚えます。
また、出題される問題は一般問題や状況設定問題が多く、基本を知っていても難しく感じるため、過去の問題をしっかりと解いて慣れましょう。
1、分娩の経過
分娩の経過は第1〜4期に分けることができます。
1).分娩第1期
分娩第1期は分娩開始から子宮口全開大までの期間になります。
- 子宮口全開大:10cm
平均所要時間は初産婦と経産婦で大きく変わるため注意が必要です。
- 平均所要時間
- 初産婦:10〜12時間
- 経産婦:4〜6時間
陣痛は不規則で生理痛や下痢の様な痛みから始まることが多く、10分毎の規則的な痛みの間隔が徐々に早くなります。
この時期に陣痛発作の持続時間と間隔を測定して、胎児心拍数を確認します。
産婦の身体的苦痛や精神的苦痛を取り除く援助が必要になります。
- 身体的苦痛の緩和
- マッサージ
- 呼吸法を促す
- 産婦がリラックスできる体位「腹圧をかけない」
- 冷、温罨法
- シャワー浴
- 精神科苦痛の緩和
- 産婦を1人にしない
- 分娩の経過を順調であることを伝えて安心させる
- 陣痛間欠時に睡眠できる環境を準備
この他に、プリンなどの消化の良い食事やこまめな水分補給、2〜3時間ごとに排尿を促します。
自力で排尿ができない場合は導尿をします。
体位について、仰臥位は仰臥位低血圧症候群のリスクがあるため避けます。
2).分娩第2期
分娩第2期は子宮口全開大から胎児娩出までの期間になります。
分娩第2期では「排臨」「発露」の経過をたどります。
- 排臨:陣痛発作による「いきみ」で胎児の後頭部が見えたり、陣痛間欠時で引っ込み見えなくなる、を繰り返す状態
- 発露:分娩が進行すると陣痛間欠時であっても胎児の後頭部は引っ込まなくなり常に見えている状態
平均所要時間は初産婦と経産婦で少し違うため注意が必要です。
- 平均所要時間
- 初産婦:2〜3時間
- 経産婦:1〜2時間
陣痛は2〜3分程の間隔になります。
産婦は陣痛発作により身体状態が変化します。
また、分娩の進行状況を鏡などで見せることで安心を与えることができます。
- 看護ケア
- 産婦を1人にしない
- 水分補給
- 呼吸法の指導
- 進行状況の報告
尿により児の汚染を防ぐために尿意を確認します。
自力で排尿ができない場合は導尿をします。
また、嘔吐することもあるためガーグルベースンなどの受け皿を用意します。
3).分娩第3期
分娩第3期は胎児娩出から胎盤娩出までの期間になります。
平均所要時間は初産婦と経産婦で少し違うため注意が必要です。
- 平均所要時間
- 初産婦:15〜30分
- 経産婦:10〜20分
胎盤と一緒に卵膜と臍帯が娩出されます。
出血量が多く平均200〜400mlの出血がありますが、500mlが正常範囲とされています。
陣痛は後陣痛になります。
4).分娩第4期
分娩第4期は胎盤娩出から2時間後までの期間になります。
子宮が元に戻ろうとするため後陣痛が1週間ほど続きます。
2、破水の種類
破水の種類は時期による分類と、卵膜が破れた場所による分類があります。
破水をしたら入浴はしません。
1).卵膜が破れた場所による分類
- 底位破水
- 正常な破水
- 完全破水のこと
- 子宮口の近い卵膜が破れること
- 高位破水
- 子宮近くの卵膜(子宮口より奥側)が破れること
- 破水の量はチョロチョロと少量
2).時期による分類
- 適時破水
- 正常な破水
- 子宮口全開大のころに起きた破水
- 早期破水
- 適時破水より早いタイミングで起きる破水
- 子宮口5cm開大のころに起きた破水は早期破水
- 遅延破水
- 子宮口全開大になっても卵膜が破れずに破水が起こらない状態
- 前期破水
- 陣痛が始まる前に起きる破水
3、過去の問題
過去の問題を見てみます。
過去問「必修」
経腟分娩の正常な経過で最初に起こるのはどれか。
- 発露
- 排臨
- 胎盤の娩出
- 児頭の娩出
- 子宮口の全開大
5.子宮口の全開大
過去問「一般」
正常な胎児の分娩機転について正しいのはどれか。
- 骨盤内嵌入時、胎児の背中は母体の背側にある。
- 胎児の前頭部が先進する。
- 胎児の顔は母体の背側を向いて娩出される。
- 肩甲横径が骨盤の横径に一致する方向で娩出される。
3.胎児の顔は母体の背側を向いて娩出される
過去問「一般」
順調に分娩が進行している産婦から「腟から水っぽいものが流れ、下着が濡れた」と看護師に訴えがあった。
流出したものを確認すると、量は少量で、羊水特有の臭いを認めた。
その時の産婦への対応で優先されるのはどれか。
- 更衣を促す。
- 体温を測定する。
- 食事摂取を勧める。
- 胎児心拍数を確認する。
4.胎児心拍数を確認する。
過去問「状況設定」①
Aさん(34歳、初産婦)は順調な妊娠経過であった。
妊娠40週5日の午前8時、10分毎の規則的な子宮収縮を主訴に来院し、医師の診察の結果、入院となった。
入院時の胎児心拍数基線は130bpm、胎児の推定体重は3,300gであった。
午後0時、助産師が内診したところ、子宮口開大4cmであった。
Aさんは陣痛発作時に腰痛を強く訴えている。
Aさんの夫(37歳)は、夫婦で出産体験を共有したいと両親学級を受講しており、入院時からAさんに付き添っている。
夫はAさんの陣痛発作時、心配そうにAさんの様子を見つめているが、陣痛間欠時にはうとうとしている。
訪室した看護師に、夫から「妻が痛がっているのですが、どうすればよいでしょう」と質問があった。
胎児心拍数基線は140bpmであった。
このときの看護師の夫への対応で最も適切なのはどれか。
- 別室での休憩を促す。
- 分娩経過について説明する。
- Aさんと病棟内を歩行するように促す。
- 産痛を緩和するためのマッサージの実施を促す。
4.産痛を緩和するためのマッサージの実施を促す。
過去問「状況設定」②
(上記①の続きの問題)
Aさんの分娩は順調に進行した。
午後5時に破水し、午後6時には子宮口開大8cmとなった。
「便が出そうです。もう、これ以上頑張れない」と陣痛発作時には全身に力が入っている。
このときの看護師の声かけで正しいのはどれか。
- 「リラックスするためにお風呂に入りましょう」
- 「赤ちゃんのために我慢しましょう」
- 「トイレに行って排便しましょう」
- 「息を吐いて力を抜きましょう」
4.「息を吐いて力を抜きましょう」
過去問「状況設定」①
Aさん(30歳、初産婦)は妊娠39週3日で陣痛発来し、4時に入院した。
その後、陣痛が増強して順調な分娩進行と診断されて、11時45分の診察で子宮口が8cm開大となった。
看護師が12時に昼食を配膳にいくとAさんは額に汗をかいて、側臥位で「陣痛がつらくて何も飲んだり食べたりしたくありません」と言っている。
陣痛発作時は強い産痛と努責感を訴え、目を硬く閉じて呼吸を止めて全身に力を入れている。
Aさんへの看護で最も適切なのはどれか。
- 坐位になるよう勧める。
- シャワー浴を勧める。
- 食事摂取を促す。
- 呼吸法を促す。
4.呼吸法を促す。
過去問「状況設定」②
(上記①の続きの問題)
Aさんは16時15分、3,300gの男児を経膣分娩で出産した。
Apgar〈アプガー〉スコアは1分後9点。
胎盤娩出直後から凝血の混じった暗赤色の性器出血が持続している。
この時点での出血量は600mL。
臍高で柔らかい子宮底を触れた。
脈拍90/分、血圧116/76mmHg。
意識は清明。
Aさんは「赤ちゃんの元気な泣き声を聞いて安心しました」と言っている。
このときの看護師のAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 子宮底の輪状マッサージを行う。
- 膀胱留置カテーテルを挿入する。
- 水分摂取を促す。
- 全身清拭を行う。
1.子宮底の輪状マッサージを行う。
過去問「状況設定」③
(上記②の続きの問題)
Aさんの分娩経過は以下のとおりであった。
2時00分 陣痛周期10分
4時00分 入院
15時00分 分娩室入室
15時30分 子宮口全開大
16時00分 自然破水
16時15分 児娩出
16時30分 胎盤娩出
Aさんの分娩所要時間はどれか。
- 12時間30分
- 14時間15分
- 14時間30分
- 16時間30分
3.14時間30分
過去問「状況設定」
Aさん(26歳、経産婦)は、夫(30歳)と長女(2歳)の3人で暮らしている。
妊娠37週2日、これまでの妊娠経過に異常はない。
9時に陣痛が開始し、10時に夫に付き添われ入院した。
入院時、陣痛間欠9分、陣痛発作30秒であった。
内診所見は子宮口2cm開大で、少量の羊水の流出を認めた。
羊水混濁はなかった。
21時30分に子宮口全開大、22時30分に3,200gの男児を正常分娩で出産した。
会陰裂傷は第2度。
23時に胎盤娩出し、子宮底の位置は臍高で硬く触れた。
児のApgar〈アプガー〉スコアは1分後8点、5分後9点。
分娩2時間後、子宮底の位置は臍下1横指で硬く触れた。
分娩時出血量は360mL。
Aさんの分娩時のアセスメントで適切なのはどれか。
- 正期産である。
- 適時破水である。
- 遷延分娩である。
- 分娩時出血量は異常である。
1.正期産である。
過去問「状況設定」
Aさん(36歳、経産婦)は、夫と長男(3歳)との3人で暮らしている。
妊娠40週0日、午前9時にAさんは陣痛開始のため入院した。
このときは未破水であった。
午後1時、体温36.8°C、脈拍64/分、血圧126/70mmHg であった。
Aさんに分娩監視装置を装着したところ、陣痛間欠4分、胎児心拍数基線は140bpmで、一過性徐脈はみられなかった。
午後2時、破水感があり医師が診察したところ、子宮口は7cm開大であり、羊水の流出がみられた。
この時点でのAさんのアセスメントで適切なのはどれか。
- 胎児頻脈
- 前期破水
- 分娩第1期
- 妊娠高血圧症候群
3.分娩第1期
ポイントは過去の状況設定問題を多く解いて産婦への対応を覚えましょう。
「1、分娩の経過」「2、破水の種類」を覚えていれば基本的な問題は解くことができます。
状況設定問題でもアセスメントで必要になるため、「1、分娩の経過」「2、破水の種類」は必ず覚えます。
勉強お疲れ様なのだ
休憩も必要なのだ