看護師が後輩を指導することは多くあります。指導者としての必要なティーチングを知ることで効果的に指導ができます。
看護師は「プリセプター」「プリセプティー」というプリセプターシップ制度の教育方法を取り入れていることが多くあります。
ティーチングを学び指導者として、先輩として、後輩と良い関係性を築く必要があります。
1、ティーチングとは
「教える」の意味を指すことが多いです。
学校や仕事などで知識やスキルを持っている人が、持っていない人に教えることです。
1).On the job training
「OJT」と略されます。
業務の中で理解度や気持ちを把握しながら、その場で指導をする方法のことです。
指導をするためには、業務の見本が見せれるだけの実践力があることが前提になります。
2).Off the job training
研修や勉強会、本などで学ぶことです。
3).コーチング
ある程度の知識やスキルを持っている人に教える方法です。
まとめてあるのだ
2、PDCA
PDCAとは「Plan」「Do」「Check」「Action」の頭文字のことです。
ティーチングの目標は相手の知識やスキルを業務に必要なレベルまで達成させることになります。
必要なレベルでは曖昧なため、明確なレベルのゴールを決めることが大切になります。
明確なゴールを目指すためにPDCAサイクルを使い育成する計画を作成して実行していきます。
┌→Plan「計画を作成」
│ ↓
│ Do「計画の実行」
│ ↓
│ Check「計画の進捗状況を確認」
│ ↓
└─Action「計画の修正を考える」
このように育成計画の「作成」「実行」「確認」「修正」を繰り返してゴールを目指します。
3、指導方法
知識やスキルを習得させるためには、指導する人が見本を見せます。
次にやらせて見せて、最後にフィードバックをします。
- やってみせる
- やらせてみせる
- フィードバック
1).やってみせる
業務の見本をみせます。
見本をみせることで、業務の仕方をイメージすることができます。
言葉だけで指導をするとメッセージを送る側と受け取る側で認識がズレる可能性があるため、必ず見本をみせます。
また、見本をみせることで言葉では伝えることが難しいことを簡単に伝えることができます。
2).やらせてみせる
見本をみせたらなるべく早くやらせます。
すぐにやらせることで実践をしやすくなります。
すぐにやらせることができなければイメージトレーニングをしてもらいます。
業務をやらせるときは指導する人がサポートする体制を整えます。
サポート体制を整えることで失敗のリスクを軽減でき、その場でアドバイスすることもできます。
3).フィードバック
ここでのフィードバックとは、業務に取り組む行動や結果を参考にして修正することで、適切な方法で業務に取り組めるようにしていくことです。
ダメだしとは違うのだ
初めて取り組む業務の後は不安がついてきます。
正しいのか正しくないのか、できていることや改善点を伝えます。
4、指導方法のポイント
指導方法をより具体的にまとめました。
1).準備
指導をするときに準備が整っていないと無駄な時間が発生したり、教えてもらう人のモチベーションが下がったりします。
そうならないために準備をしっかりと整えます。
資料
- マニュアル
- 必要書類
など
環境
- PCを立ち上げる
- 必要ソフトのインストール
- インターネット環境の確認
- 必要な道具の用意
など
協力者
- 指導することができる人
など
2).言動
仕事は言われた業務をすることが大切ですが、臨機応変に対応しながら業務ができる方がもっと良い人材となります。
良い人材を作るために思考力を身につけてもらいます。
思考力を身につけてもらうために指導内容の伝え方を工夫します。
なぜ「Why」
なぜ仕事をする必要があるのか目的や理由を教えます。
仕事の目的や理由が理解できると「どうしていけば良いのか」「今は何をすれば良いのか」「自分は何をすれば良いのか」など仕事のゴールを見据えた思考をすることができます。
悪い例:床が濡れているから掃除します
良い例:床が濡れていると滑りやすいから危ないので掃除します
なに「What」
なにをすれば良いか具体的に伝えます。
具体的に伝えることで何をすれば良いか理解して行動することができます。
また、その業務をするときに必要な知識やスキルが明らかになり、指導する内容が認識しやすくなります。
悪い例:点滴をして下さい
良い例:○○さんの点滴を用意して下さい。
いつ「When」
いつまでにやるのか具体的に伝えます。
具体的に期限を伝えることで優先順位を考えれるようになります。
曖昧な期限を伝えてしまうと仕事に支障をきたす場合があります。
悪い例:今日中に○○さんの採血をして下さい
良い例:16:00までに○○さんの採血を検査室にへ持って行って下さい
どのように「How」
どのようにやるのか具体的に伝えます。
仕事に慣れている人にとって「簡単」「当たり前」の業務でも、新人にとっては「わからない」「わからないことがわからない」などと思うことがあります。
具体的に指導する必要があるため「やってみせる」ことが大切になります。
3).理解度
指導は一方的に伝えるのではなく、相手が理解しているか確認する必要があります。
そのため指導した内容を相手の言葉で話してもらうことで理解度を知ることができます。
また、同じ新人でも「学生から社会人になる」と「社会人経験がある」ではレベルが変わります。
指導内容をレベルに合わせることで効率よく指導することができます。
他にも指導内容を全て伝えることは答えを言っているのと同じになるため、時には全て言わずヒントを出して主体性を引き出すことも必要になります。
ポイント
- 「ここまでの説明で不安なことはありますか、大丈夫ですか」と聞く
- 話しやすい雰囲気を作る
新人は「ここまでの説明でわからないことありますか、大丈夫ですか」と聞くとほとんどの新人は「はい、大丈夫です」と答えてしまいます。
これは「指導者にわからないと言いづらい」「わからないことがわからない」などの理由があるからです。
新人に不安なことはありますかと聞くと思い当たることが多くあるため、「はい」以外の言葉を返してくれることが多くなります。
4).メモ
指導を受ける人にメモを取ってもらいます。
メモを取らない人にはメモを取るメリットや必要性を説明して、なぜメモが必要なのかを説明します。
メモを取るメリットや必要性
- 業務内容を見返すことができる
- 記憶の曖昧さを防ぐ
- 頼ることができない状況が来たときに対応できる
など
メモに書く字は時間が経つと、自分の字でも読めなくなることがあります。
メモを後でまとめることを勧めます。
早い段階でメモを「まとめる」「見返しす」ことをすることで習慣化します。
メモを取ることを目的にはしません。
5、フィードバックのポイント
業務を終えたら振り返りとアドバイスをします。
1).振り返り
業務についてわからないことや上手くいかなかったこと、難しいことなど指導を受ける人の話を聴きます。
業務の指示内容や作業工程などを照らし合わせて、その原因を探します。
どうすれば解決できるのかを考えてもらいます。
2).アドバイス
アドバイスを受けると安心感を得ることができます。
また、人のタイプは「論理性」の左脳派と「感情」の右脳派に大きく分けることができます。
指導をするときに、相手のタイプを考えてからアドバイスすると効果が高くなります。
論理性の左脳派
- 客観的な意見を伝える
- 根拠を伝える
- 端的に伝える
例:○○さんの採血は前もって時間を伝えた方が良いですよ。時間を伝えないと断られますよ
感情の右脳派
- 努力や苦労に共感する
- 気持ちも合わせて伝える
例:○○さんの採血難しくなかったですか?難しい採血なのにできるなんですごいですね。ありがとうございます。
3).ほめる
相手をほめるためには、認めることを伝えなければいけません。
自分の中で「認めている」と思っているだけでは相手をほめたことになりません。
- 認めた「良い」ことを言葉に出して伝える
良いタイミング
- 相手のモチベーションが下がっているとき
- ほめることをしているとき
- プロセス「過程」でも努力をしているとき
4).叱る
叱るを怒ると勘違いしている人が多くいますが、叱るは相手のことを思い、ことの重大さに気づかせ行動変容を促すことができます。
叱る焦点が「人」に向けられると怒りになり言いすぎてしまう可能性があるため、できごと対してに叱ります。
叱る焦点は必ず「できごと」にして、その人がとった行動をするとどうなるのか重大さを伝えます。
また、周囲に人がいるとプライドを傷つけられるなどで反感を買うことがあるため、叱るときは1対1で話します。
落ち込みが強い場合は成長を妨げる場合があるため、叱ったあとは必ずフォローを入れます。
フォローをするときに「自分の失敗談」「叱る人への期待」などを伝えると効果的です。
ポイント
- 叱るできごとは1つにする
- 叱る内容を整理する
- 叱る必要があるか考察する
- 叱るときは簡潔に話す
- 「あなた程の人がこのような言動をしたなんて残念です」などの感情を伝える
- 叱った後は必ずフォローする
強い口調にならない様に気をつけるのだ