呼吸に関係している基本的なことをまとめました。呼吸音の異常所見など良ければ参考にして下さい。
呼吸は生命維持の基本です。
全ての疾患や症状を観察する場合でも呼吸状態は基本となります。
呼吸器ってとても大切なのだ
1、胸郭
1).構造
- 12個の胸椎
- 12対の肋骨
- 胸骨
- 横隔膜
- 肋間筋
2).肋骨
- 第2肋骨は胸骨角の真横にある
- 第7〜8肋骨は肩甲骨角に位置する
肋骨と肋骨の間は肋間と呼びます。
第2肋骨と第3肋骨の間は第2肋間と呼び、少ない数字で表します。
肋間は少ない方ので呼ぶのだ
2、問診ポイント
1).呼吸困難、息切れの有無
- 呼吸困難は自覚症状
- どのような時に苦しいか
- 息切れするのか
など
ヒュー・ジョーンズの呼吸困難度
1、Ⅰ度「正常」
- 同年齢の健常者と同様の労作ができる
2、Ⅱ度「軽度」
- 平地では同年齢の健常者と同様に歩行はできるが坂道や階段では息切れする
3、Ⅲ度「中度」
- 平地歩行も健常者並みにできないが自分のペースならば1.6km以上歩ける
4、Ⅳ度「高度」
- 平地も休み休みでなければ50m以上歩けない
5、Ⅴ度「極めて高度」
- 会話や衣類の着脱など身の回りのことをするにも息切れを自覚する
- 息切れのため外出もできないの
「ヒュー・ジョーンズの呼吸困難度」は国試とかでも出てくるのだ
2).咳嗽の有無
- 乾性「痰を伴わない」
- 湿性「痰を伴う」
- いつから咳嗽があるのか
- どれぐらいの頻度か
- 咳嗽が出現する時間帯
など
3).喀痰の有無
- 性状「色、粘稠度」
- 量
など
4).胸痛の有無
- 性質
- 部位
- いつから胸痛があるのか
- 胸痛の持続時間
- 胸痛の誘引の有無
など
5).喫煙歴
喫煙指標「ブリンクマン指数」=1日に吸う本数×喫煙年数
400以上で肺がんのリスクは高まります。
数値が大きいほど呼吸器をはじめ様々な疾患に罹患するリスクが高くなります。
国試でも出る計算式なのだ
6).既往歴
- アレルギー
- 呼吸器疾患
- 治療経験
- 手術
など
7).環境
- アスベスト
- 粉塵
- 花粉
- PM2.5
など
3、観察項目
1).バイタルサイン
2).SpO2「経皮的動脈血酸素飽和度」
- パルスオキシメーターで測定
- 基準値:96%以上
- 個人差が大きい
- 95%のキープをめざす
- 個人差があるため95%以上のキープができなければ90%以上のキープをめざす
3).SaO2「動脈血酸素飽和度」
- 動脈血ガス分析で測定
- 基準値:96%以上
- 個人差が大きい
- 95%のキープをめざす
- 個人差があるため95%以上のキープができなければ90%以上のキープをめざす
4).PaO2
1Torr=1mmHgになります。
- 基準値:80〜100Torr
- 80Torr=SaO2 96%
- 60Torr=SaO2 90%
- 60Torr以下で急速に酸素飽和度が低下
PaO2の値からSaO2の値が読み取れるのか〜
5).酸塩基平衡
pH
基準値:7.35〜7.45
- 基準値より高い=アルカローシス
- 基準値より低い=アシドーシス
まずはpHからアルカローシスかアシドーシスをみるのだ
PaCO2
基準値:35〜45mmHg
- 基準値より高い=呼吸性アシドーシス
- 基準値より低い=呼吸性アルカローシス
HCO3-
基準値:24mEq/L
- 基準値より高い=代謝性アルカローシス
- 基準値より低い=代謝性アシドーシス
6).爪の状態
- 正常角度=160°以内
- ばち状指=180°以上
- 慢性呼吸器不全でばち状指の症状が出現しやすい
身体を観察するポイントなのだ
7).チアノーゼ
- 還元ヘモグロビン濃度=5g/dl以上
- 唇、爪が暗紫色、暗赤色になる状態
身体を観察するポイントなのだ
8).呼吸音
まずは正常な音を知るのだ
聴診器は膜型を使うのだ
正常音
〜肺胞呼吸音〜
- 肺野全体で聴取
- 吸気:呼気=3:1で吸気が良く聴こえる
- 柔らかい低い音質
〜気管支肺胞呼吸音〜
- 気管分岐部付近で聴取
- 吸気:呼気=1:1
- 肺胞呼吸音よりやや高め
〜気管支呼吸音〜
- 頸部の太い気管部位で聴取
- 吸気:呼気=2:3で呼気が良く聴こえる
- 高い粗い音質
異常音
〜低音性連続性ラ音「いびき音」〜
- 低調な連続性ラ音「いびきに似ている」
- 呼気時に聴こえやすい
- 痰などの分泌貯留
- 腫瘍などにより気管、気管支が狭窄
〜高音性連続性ラ音「笛声音」〜
- 高調な連続性ラ音「ピーピーと聴こえる」
- 呼気時に聴こえやすい
- 気管支喘息、肺気腫、腫瘍などにより気管、気管支が狭窄
〜細かい断続性ラ音「捻髪音」〜
- 高調な断続性ラ音「パリパリと聴こえる」
- 吸気時に聴こえやすい
- 初期のうっ血性心不全、初期の肺炎、初期の肺水腫
〜粗い断続性ラ音「水泡音」〜
- 低調な断続性ラ音「ブクブク、ブツブツと聴こえる」
- 吸気時に聴こえやすい
- うっ血性心不全、肺炎、肺水腫、痰の貯留
9).呼吸音の異常所見
異常所見は大切なのだ
左右差や減弱、消失部位がある
- 無気肺
- 気胸
- 胸水貯留
など
左右差や増強部位がある
- 肺炎
- 肺線維症などの呼吸困難
- 腫瘍などの気管支閉塞により健側で代償する
など
呼気延長がある
- 気管支喘息
など
10).胸郭の左右差
胸郭の左右をみる方法は前面の肋骨弓の下に手を軽く添え深呼吸をしてもらいます。
後面は肩甲骨角より少し下に手を軽く添え深呼吸をしてもらいます。
自分の手の広がりで観察をします。
友達同士でやってみるのだ
正常
左右対称に広がります。
異常
片側に肺炎や気胸、無気肺、肺気腫、胸膜炎がある場合は患側が制限され左右差が出現します。
11).振盪音
振盪音をみる方法は胸壁に手を置いて指の付け根や尺骨側表面で触診します。
チョップをする手の形を胸壁に置くのだ
低めの声で「ひと〜つ」と発声してもらいます。
正常
- 左右対称
- 上部が強く下部が弱い
- 横隔膜下では触れない
異常
- 炎症疾患がある部位では伝導が強くなる
- 肺気腫、胸水では伝導が弱くなる
ポイント
- 痩せた人は響きやすい
- 肥満の人や筋肉質の人は響きにくい
12).打診
上から下へ左右対称に肋間を打診をしていきます。
手首をスナップさせるのだ
正常
- 清音
- 骨部分や内臓部分は濁音
異常
肺気腫などで肺が過膨張している場合は過共鳴音が聞こえます。
肺炎や腫瘍、胸水貯留、無気肺などでは濁音が聞こえます。