「災害」は看護師国家試験で良く出題されます。毎年出題されるぐらい出題頻度は高いです。必修問題から状況設定問題まで幅広く出題されますが一般問題が多いです。
出題範囲が広すぎて、何をどこまで覚えれば良いかわからなくなりますが、過去の問題から要点を中心に覚えます。
ただ、要点だけでもかなりの量があるため時間をかけてしっかりと覚えます。
1、災害後の身体反応
- 発災後:3〜7日
- 心身的ストレスが最も強い
- 頭痛
- めまい
- 嘔気
- 腹痛
- 下痢
- 便秘
- 高血圧
- 数日で治る
- 発災後:〜1か月
- 急性ストレス障害
- 不眠
- イライラ
- 2週〜1ヶ月に症状が現れやすい
- 1ヶ月以内で治る
- 発災後:1ヶ月〜
- 心的外傷後ストレス障害「PTSD」
- 侵入症状
- 過覚醒症状
- 半年経って出現することもある
2、START法
負傷者が①歩行できるか、②呼吸はしているか、③呼吸数はどうか、④循環状態はどうか、⑤意識レベルはどうか、により負傷者を分けます。
①歩行
├「可能」→負傷─「なし」治療不要
「不可能」 └「あり」→軽処置群(緑)
↓
②呼吸
├「なし」→気道確保
「ある」 └自発呼吸
│ ├「なし」→不処置群(黒)
↓ 「ある」
③呼吸回数 └→最優先治療群(赤)
├30回/分以上 or 9回/分以下
10〜29回/分 └→最優先治療群(赤)
↓
④循環状態
爪床再充血時間(橈骨動脈触知)
├2秒を超える(触知せず)
2秒以下(触知可能) └→最優先治療群(赤)
↓
⑤意識障害
従命反応
├「なし」→最優先治療群(赤)
「あり」→非緊急治療群(黄)
3、トリアージタッグをつける部位
右手首関節部につけます。
右手首関節部が負傷している場合はつける部位を変えます。
衣服や靴などにはつけません。
- つける順番
- 右手首関節部
- 左手首関節部
- 右足関節部
- 左足関節部
- 頚部
4、治療の優先順位
1).最優先治療群
識別:赤色(Ⅰ)
重症群で治療の優先は1順位になります。
直ちに処置を行えば、救命が可能な者が対象になります。
- 気道閉塞
- 呼吸困難
- 意識障害
- 多発外傷
- 多発骨折
- ショック
- 大量の外出血
- 腹膜炎
- 広範囲熱傷
- 気道熱傷
- クラッシュシンドローム など
2).非緊急治療群
識別:黄色(Ⅱ)
中等症群で治療の優先は2順位になります。
多少治療の時間が遅れても生命には危険がない者が対象になります。
- 全身状態が比較的安定している傷病者
- 脊髄損傷
- 四肢長管骨骨折
- 中等度熱傷 など
3).軽処置群
識別:緑色(Ⅲ)
軽症群で治療の優先は3順位になります。
非緊急治療群や軽処置群以外の軽易な傷病で、ほとんど専門医の治療を必要としない者が対象になります。
- 四肢骨折
- 脱臼
- 打撲
- 捻挫
- 擦過傷
- 軽度熱傷
- 過換気症候群 など
4).不処置群
識別:黒色(0)
死亡群で治療の優先は4順位になります。
既に死亡している者又は直ちに処置を行っても明らかに救命が不可能な者が対象になります。
5、過去の問題
過去の問題では、状況に応じた対応が問題とされていることが多いため、その対応を覚えます。
過去問「必修」
災害による心理的ストレスが身体反応として最も強く現れる時期はどれか。
- 発災後3〜7日
- 発災後2週〜1か月
- 発災後半年〜3年
- 発災後4年目以降
1.発災後3〜7日
過去問「必修」
災害時に最も優先して治療を行うのはどれか。
- 脱臼
- 気道熱傷
- 足関節捻挫
- 過換気症候群
2.気道熱傷
過去問「一般」
【不適切問題】
- 設問文が不明瞭で複数の選択肢が正解と考えられるため。
Aさん(75歳、男性)は、2型糖尿病で超速効型インスリンによる治療を行っている。
災害に備えてAさんに指導する必要があるのはどれか。
- 開封したインスリンは1年間使用できる。
- 使用しているインスリンの名称を正確に覚える。
- 消毒薬の入手が難しい場合は消毒せずに注射してもよい。
- 平常時と同じように非常時もインスリン注射は食前に行う。
2.使用しているインスリンの名称を正確に覚える。
3.消毒薬の入手が難しい場合は消毒せずに注射してもよい。
過去問「一般」
災害医療におけるトリアージについて正しいのはどれか。
- 傷病者を病名によって分類する。
- 危険区域と安全区域を分けることである。
- 医療資源の効率的な配分のために行われる。
- 救命が困難な患者に対する治療を優先する。
3.医療資源の効率的な配分のために行われる。
過去問「一般」
災害医療について正しいのはどれか。
- 災害拠点病院は市町村が指定する。
- 医療計画の中に災害医療が含まれる。
- 防災訓練は災害救助法に規定されている。
- 災害派遣医療チーム〈DMAT〉は災害に関連した長期的な医療支援活動を担う。
2.医療計画の中に災害医療が含まれる。
過去問「一般」
災害に関する記述で正しいのはどれか。
- 災害時の要配慮者には高齢者が含まれる。
- 人為的災害の被災範囲は局地災害にとどまる。
- 複合災害は同じ地域で複数回災害が発生することである。
- 発災直後に被災者診療を行う場では医療の供給が需要を上回る。
1.災害時の要配慮者には高齢者が含まれる。
過去問「一般」
災害派遣精神医療チーム〈DPAT〉で正しいのはどれか。
- 厚生労働省が組織する。
- 被災地域の精神科医療機関と連携する。
- 発災1か月後に最初のチームを派遣する。
- 派遣チームの食事は被災自治体が用意する。
2.被災地域の精神科医療機関と連携する。
過去問「一般」
災害対策基本法に定められている内容で正しいのはどれか。
- 物資の備蓄
- 避難所の設置
- 災害障害見舞金の支給
- 救護班による医療の提供
1.物資の備蓄
過去問「一般」
朝9時に大規模地震が発生した。
病棟の患者と職員の安全は確認できた。
病棟内の壁や天井に破損はなかったが、病院は、停電によって自家発電装置が作動した。
病棟の看護師長が行う対応で適切なのはどれか。
- 災害対策本部を設置する。
- 災害時マニュアルを整備する。
- 隣接する病棟に支援を要請する。
- スタッフに避難経路の安全確認を指示する。
4.スタッフに避難経路の安全確認を指示する。
過去問「一般」
山村部で地震による家屋倒壊と死者が出た災害が発生し、3週が経過した。避難所では、自宅の半壊や全壊の被害にあった高齢者を中心に10世帯が過ごしている。
高齢者の心のケアとして最も適切なのはどれか。
- 認知行動療法を行う。
- 自分が助かったことを喜ぶよう説明する。
- 地震発生時の状況について詳しく聞き取る。
- 長年親しんだものの喪失について話せる場をつくる。
4.長年親しんだものの喪失について話せる場をつくる。
過去問「一般」
大規模災害発生後2か月が経過し、応急仮設住宅で生活を始めた被災地の住民に出現する可能性が高い健康問題はどれか。
- 慢性疾患の悪化
- 消化器感染症の発症
- 深部静脈血栓症の発症
- 急性ストレス障害の発症
1.慢性疾患の悪化
過去問「一般」
災害時のトリアージで正しいのはどれか。
- トリアージタッグは衣服に装着する。
- 治療優先度の高さはトリアージ区分の I、II、Ⅲの順である。
- トリアージの判定は患者の到着時および到着後30分の2回行う。
- 最優先に治療を必要とする者には、黄色のトリアージタッグを装着する。
2.治療優先度の高さはトリアージ区分の I、II、Ⅲの順である。
過去問「一般」
災害発生時に行うSTART法によるトリアージで最初に判定を行う項目はどれか。
- 意識
- 呼吸
- 循環
- 歩行
4.歩行
過去問「一般」
気管切開下で人工呼吸器を装着している利用者に対して、訪問看護事業所が災害に備えて行うことで適切なのはどれか。
- 人工呼吸器の予備の回路を預かる。
- 災害時の個別支援マニュアルを作成する。
- 医療機関から非常用の人工呼吸器を借りる。
- 事業所内に利用者が避難できる場所を確保する。
2.災害時の個別支援マニュアルを作成する。
過去問「一般」
災害拠点病院の説明で正しいのはどれか。
- 国が指定する。
- 災害発生時に指定される。
- 広域搬送の体制を備えている。
- 地域災害拠点病院は各都道府県に1か所設置される。
3.広域搬送の体制を備えている。
過去問「一般」
災害拠点病院について正しいのはどれか。
2つ選べ。
- 広域災害医療に対応する。
- 災害発生時に指定される。
- 医療救護班の派遣機能を持つ。
- 免震構造であることが指定要件である。
- 救急救命士の配置が義務付けられている。
1.広域災害医療に対応する。
3.医療救護班の派遣機能を持つ。
過去問「状況設定」①
午前9時頃、震度5強の地震が発生した。
二次救急医療機関の救命救急病棟に勤務する看護師は、自身の身の安全を確保し、揺れが収まると病院の災害発生時のマニュアルに沿って行動を開始した。
病棟には人工呼吸器を使用中の患者が1人、輸液ポンプを使用中の患者が3人、酸素療法中の患者3人が入院している。
この時点の看護師の対応として適切なのはどれか。
2つ選べ。
- 被災状況の報告
- 入院患者の避難誘導
- 傷病者の受け入れ準備
- 入院患者の状態の把握
- 使用中の医療機器の作動状況の確認
4.入院患者の状態の把握
5.使用中の医療機器の作動状況の確認
過去問「状況設定」②
(上記①の続きの問題)
発災から3時間後、地震後に発生した火災現場付近から救出されたA君(6歳)と母親のBさん(32歳)の2人が搬送されてきた。
A君は避難時に転倒し、左肘関節付近の腫脹と疼痛を訴えていた。
バイタルサインに異常はない。Bさんは避難する際にA君が煙に巻き込まれそうになるところをかばい、髪の一部と鼻毛の一部が焦げていた。
右頰部に2cm×2cm、右上肢に5cm×10cmの紅斑と水疱を認める熱傷を負っていた。
バイタルサインに異常はないが、熱傷部位の疼痛を訴えていた。
トリアージの結果、看護師の初期対応として優先されるのはどれか。
- A君の既往歴の聴取
- A君への鎮痛薬の準備
- Bさんの気道確保の準備
- Bさんの熱傷部位の冷却
3.Bさんの気道確保の準備
過去問「状況設定」
(上記②の続きの問題)
A君とBさんはともに入院して治療が始まった。
発災から10日後、A君、Bさんの治療経過は良好で合併症もなくバイタルサインは安定していた。
Bさんから看護師に「Aは好きなお菓子を食べず、私のそばからずっと離れず甘えてきます。昨夜はおねしょをしていたようで、びっくりしました。どうしたらよいのかわかりません」と相談があった。
看護師の対応として適切なのはどれか。
- 「お母さんがしっかりしましょう」
- 「A君が1人になる時間をつくりましょう」
- 「A君に水分を控えるよう声をかけましょう」
- 「A君が甘えてきたら抱きしめてあげましょう」
4.「A君が甘えてきたら抱きしめてあげましょう」
過去問「状況設定」①
Aさん(70歳、男性)は、妻(68歳)と2人暮らし。
3年前に筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉と診断され、在宅で療養生活を続けていた。
その後、Aさんは症状が悪化し、入院して気管切開下の人工呼吸療法、胃瘻による経管栄養法を受けることになった。
妻は、退院後に必要なケアの技術指導、人工呼吸器や胃瘻の管理方法、緊急・災害時の対応について病棟看護師から指導を受けた。
退院前カンファレンスにおいて、訪問看護のほかに必要な在宅サービスについて検討することになった。
妻は慢性腎不全のため、週に3回の血液透析を受けており、1回に約6時間の外出が必要である。
Aさんが利用する在宅サービスで最も優先度が高いのはどれか。
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 通所リハビリテーション
- 短期入所生活介護
- 療養通所介護
4.療養通所介護
過去問「状況設定」②
(上記①の続きの問題)
退院から1週後に妻から訪問看護ステーションに連絡があり「人工呼吸器のアラームが鳴り続けていて、どうしたらいいのかわかりません。低圧アラームが点灯しています。気管カニューレも抜けていないし、呼吸もいつも通りにしているように見えます」と尋ねた。
この時の訪問看護師の妻への回答で正しいのはどれか。
- 「気管内の吸引を行ってください」
- 「回路にゆるみがないか確認してください」
- 「電源プラグが抜けていないか確認してください」
- 「ウォータートラップに水が溜まっていないか確認してください」
2.「回路にゆるみがないか確認してください」
過去問「状況設定」
(上記②の続きの問題)
退院から2週後、妻から「昨日、私が透析を受けている病院で災害が発生した場合の診療について説明がありました。在宅での生活にも少し慣れてきたし、夫のことも気になるので、あらためて災害に備えておきたいのですが、何から始めればよいでしょうか」と訪問看護師に相談があった。
訪問看護師が妻に指導する内容で最も優先度が高いのはどれか。
- 予備の電源の選び方
- 福祉避難所への移動手段
- 災害用持ち出し物品の準備
- 足踏み式吸引器の使用方法
1.予備の電源の選び方
過去問「状況設定」①
Aちゃん(4歳、男児)は、昨夜の土砂災害によって両親とともに小学校の体育館に避難している。母親は自分の両親の安否が不明なため眠ることができなかった。また、落ち着きがなく感情的になっている。父親はずっと毛布をかぶって横になっている。
昼間のAちゃんは体育館の中を走り回っている。また、指しゃぶりをしながら両親の姿を気にしているが、近づいて甘えようとはしない。
Aちゃんの反応で正しいのはどれか。
- 自我同一性の拡散
- 急性ストレス障害
- 外傷後ストレス障害〈PTSD〉
- 注意欠陥多動性障害〈ADHD〉
2.急性ストレス障害
過去問「状況設定」②
(上記①の続きの問題)
Aちゃんの母親は自分の両親と連絡がとれた。避難所生活5日目、親子3人で過ごすことが多くなってきた。Aちゃんの活気がなくなってきている。
地域の病院から派遣された看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- 両親のAちゃんへの関わりを見守る。
- Aちゃんと災害時のことを一緒に話す。
- Aちゃんが他の子どもと遊べる機会をつくる。
- 災害時の様子を絵に描くようAちゃんに勧める。
3.Aちゃんが他の子どもと遊べる機会をつくる。
過去問「状況設定」
(上記②の続きの問題)
避難から3週後、Aちゃん家族は仮設住宅に移動が決定し、両親は忙しくしている。Aちゃんは1人で過ごすことが多く、絵本を持ってぼんやりとしていることが多い。母親からAちゃんの様子がいつもと違うと看護師に相談があった。
母親への対応で最も適切なのはどれか。
- 引っ越しすることを説明するよう促す。
- スキンシップの時間を増やすように促す。
- すぐに専門医の外来を受診するよう促す。
- 子どもの反応は母親の関わりが原因だと話す。
2.スキンシップの時間を増やすように促す。
6、追加問題
113回
トリアージタッグ(別冊No.1)を別に示す。
待機的治療群となるトリアージタッグはどれか。
- ①
- ②
- ③
- ④
別冊No.1
3 ③
勉強お疲れ様なのだ
休憩も必要なのだ