自閉症や広汎性発達障害、アスペルガー症候群など色々な名称がありましたが2013年にアメリカの精神医学会の診断基準DSMー5発表以降に「自閉スペクトラム症」としてまとめて呼ばれるようになりました。
症状は多様であり、個人に合った適切な療育や教育的支援が必要になります。
1、原因
原因は特定されていませんが、遺伝的要因が複雑に関与して起こる、生まれつき脳の機能障害とされています。
妊娠中にバルプロ酸ナトリウムを使用すると自閉スペクトラム症のリスクが増加すると報告があります。
環境的要因は否定的で、育て方などは原因ではありません。
1).発生頻度
約100人に1人と言われています。
男性に多く女性と比べると、男性の発生頻度は女性の約4倍あると言われています。
2、診断
診断はDSMー5に記述されています。
次の条件などが満たされたときに自閉スペクトラム症として診断されます。
1、複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥があること
2、行動、興味、または活動の限定された反復的な様式が2つ以上あること(情動的、反復的な身体の運動や会話、固執やこだわり、極めて限定され執着する興味、感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ など)
3、発達早期から1,2の症状が存在していること
4、発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
5、これらの障害が、知的能力障害(知的障害)や全般性発達遅延ではうまく説明されないこと
厚生労働省より
3、併存症
約70%以上の方が精神疾患を1つ、約40%に方が精神疾患を2つ持っていると言われ、特に知的能力障害が多いです。
他にもADHD「注意欠如・多動症」やDCD「発達性協調運動症」、不安症、抑うつ障害、学習障害、てんかん、睡眠障害、便秘などがあります。
てんかんは知的障害が重度である方ほど多く併存しています。
4、症状
- 言葉の遅れ
- 独り言
- オウム返し
- 会話不成立
- 字義通りの言語
- 言語障害
- コミュニケーション障害
- 社会性の低下
- 視線を合わせない
- 他者の真似をしない
- 共感的でない
- 表情が乏しい
- 人見知りしない
- 親のあとを追わない
- 触られることを嫌う
- 1人遊びを好む
- 食べ物の好き嫌いが多い
- 1つのことへの関心
- こだわり
- 感覚過敏
- 感覚鈍麻 など
自閉スペクトラム症の方は個々の特性があり、その特性を周囲に理解されず、「いじめられる」「努力しても失敗を繰り返す」などからストレスを強く受けることが多くあります。
ストレスにより頭痛や腹痛、食欲不振、不安、うつ状態、緊張、興奮、自傷行為、暴言暴力、不登校、引きこもりなどの症状を引き起こすことがあります。
5、治療
根本的な原因を治療することはまだできません。
かんしゃくや多動、こだわり、興奮、攻撃性、パニック、自傷行為、不眠などといった症状は、薬剤により軽減することがあります。
自閉スペクトラム症の方は独特な仕方で物事を学んでいく傾向にあり、個人の特性や発達のペースに合わせた療育や教育が必要で、家族や周囲が個人の特性を理解して支援することが大切になります。