「インスリン製剤」に関する問題は良く出題されています。看護師国家試験では基本的なことよりも、状況設定問題として出題されることが多いです。
良く出題されるため、しっかり覚えることをお勧めします。
1、インスリン製剤
インスリン製剤では分量を「単位(U)」で表し、インスリン1単位は0.01mlと同じになります。
インスリン自己注射の投与経路は皮下注射で、同一部位に皮下注射をすると脂肪組織萎縮や硬結のリスクが高くなります。
そのため腹部や上腕、臀部、大腿部など約2cm間隔で皮下注射の位置を変えます。
副作用は低血糖症状を起こす可能性があります。
2、過去の問題
過去の問題を見てみます。
過去問「一般」
【不適切問題】
- 設問文が不明瞭で複数の選択肢が正解と考えられるため。
Aさん(75歳、男性)は、2型糖尿病で超速効型インスリンによる治療を行っている。
災害に備えてAさんに指導する必要があるのはどれか。
- 開封したインスリンは1年間使用できる。
- 使用しているインスリンの名称を正確に覚える。
- 消毒薬の入手が難しい場合は消毒せずに注射してもよい。
- 平常時と同じように非常時もインスリン注射は食前に行う。
2.使用しているインスリンの名称を正確に覚える。
3.消毒薬の入手が難しい場合は消毒せずに注射してもよい。
過去問「一般」
Aさん(59歳、男性)は、糖尿病で内服治療中、血糖コントロールの悪化を契機に膵癌と診断され手術予定である。HbA1c7.0%のため、手術の7日前に入院し、食事療法、内服薬およびインスリンの皮下注射で血糖をコントロールしている。Aさんは、空腹感とインスリンを使うことの不安とで、怒りやすくなっている。
Aさんに対する説明で適切なのはどれか。
- 「手術によって糖尿病は軽快します」
- 「術後はインスリンを使用しません」
- 「少量であれば間食をしても大丈夫です」
- 「血糖のコントロールは術後の合併症を予防するために必要です」
4.「血糖のコントロールは術後の合併症を予防するために必要です」
過去問「一般」
インスリン製剤について正しいのはどれか。
- 経口投与が可能である。
- 冷凍庫で長期保存できる。
- 皮下注射は同じ部位に行う。
- 飛行機に搭乗する際は手荷物として持ち込む。
4.飛行機に搭乗する際は手荷物として持ち込む。
過去問「状況設定」
Aちゃん(11歳、女児)は、両親と3人で暮らしている。3週前から疲労感を訴え昼寝をするようになった。そのころから夜間に尿意で起きてトイレに行くようになり、1日の尿の回数が増えた。2日前から食欲がなくヨーグルトや水分を摂取していたが、今朝から吐き気と嘔吐とがあり水分も摂れない状態になったため、母親とともに受診した。
血液検査データは、赤血球580万/μL、Hb13.9g/dL、Ht44%、白血球9,500/μL、尿素窒素31mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、Na141mEq/L、K4.8mEq/L、Cl94mEq/L、随時血糖900mg/dL。
動脈血ガス分析は、pH7.21、BEー12.3、HCO3‾10.9mEq/L。
尿検査は、尿糖2+、尿ケトン体3+であった。
Aちゃんは1型糖尿病の疑いで入院した。
Aちゃんは、インスリンの持続的な注入を開始し、3日後、血糖値が安定した。1型糖尿病と診断が確定しインスリン自己注射を始めることになった。ペン型注入器を用いて、毎食前に超速効型インスリンの皮下注射、21時に持効型溶解インスリンの皮下注射を行うという指示が出ている。
Aちゃんと両親に対するインスリン自己注射の指導で適切なのはどれか。2つ選べ。
- インスリンを注射する部位は前回と違う部位に行う。
- 超速効型インスリンは単位数を変更せずに注射する。
- 食欲がないときは食後に超速効型インスリンを注射する。
- 血糖値が100mg/dL以下のときは持効型溶解インスリンの注射を中止する。
- インスリンの注射をした後は針を刺した場所をよくもむ。
1.インスリンを注射する部位は前回と違う部位に行う。
3.食欲がないときは食後に超速効型インスリンを注射する。
過去問「状況設定」
Aさん(76歳、女性)は、長女(46歳、会社員)との2人暮らし。
Aさんは5年前に2型糖尿病と診断された。
1年前から血糖測定とインスリン自己注射を朝1回行っている。
炊事は主にAさんが担当している。
Aさんは、長女の帰宅に合わせて夕食を摂るため、夕食時間にばらつきがある。
定期の外来受診時にAさんは「時々汗が出て手が震えることがあります」と外来看護師に相談した。
Aさんのバイタルサインは、体温36.4°C、脈拍74/分、血圧128/80mmHg。
身長154cm、体重68kgである。
1か月後、Aさんと一緒に外来を訪れた長女は「今までインスリンの治療は母に任せてきましたが、母は眼が見えにくく、インスリンの量が多い日があったようです。母が自己注射を続けられるように、私も手伝えればと思います」と外来看護師に話した。
外来受診時、Aさんに末梢神経障害の症状は認められず、手指の動きに問題はなかった。
Aさんがインスリン自己注射を行う上で、外来看護師が行う長女への助言で適切なのはどれか。
- 「インスリンの量は娘さんが一緒に確認しましょう」
- 「血糖測定は娘さんが代わりに行いましょう」
- 「注射の針はつけたままにしましょう」
- 「注射の部位は上腕を選びましょう」
1.「インスリンの量は娘さんが一緒に確認しましょう」
過去問「状況設定」
Aさん(68歳、女性)は、1人暮らし。
隣の市に娘がいる。
日常生活は自立している。
10年前に糖尿病と診断され、血糖降下薬を服用している。
最近の血液検査でHbA1cが8.5%のため、インスリンの自己注射を導入することになった。
朝食前の自己注射によって、Aさんの血糖値は安定していた。
6年後、Aさんはサービス付き高齢者向け住宅に転居した。
転居後の外来受診時、Aさんは外来看護師に「施設の食堂で食事をしている。食堂に行く前は化粧で忙しいが、毎日楽しい。間食はしていない」と話す。
転居後2か月のHbA1c値が上昇していたため、外来看護師がAさんに質問すると「引っ越してから、注射を忘れることがあった」と話した。
Aさんの自己注射の手技に問題はなく、Mini-MentalStateExamination〈MMSE〉は29点だった。
Aさんの娘に確認すると、Aさんの自室の冷蔵庫に、未使用のインスリンが余っていることが分かった。
外来の看護師からAさんと娘への助言で最も適切なのはどれか。
- 訪問看護師に注射を依頼する。
- 注射をしたらカレンダーに印をつける。
- 化粧で使う鏡に「朝食前に注射」のメモを貼る。
- サービス付き高齢者向け住宅の職員にインスリンの残量を数えてもらう。
3.化粧で使う鏡に「朝食前に注射」のメモを貼る。
過去問「状況設定」
Aさん(28歳、初産婦)は、夫(30歳)と2人暮らし。
妊娠25週4日に妊娠糖尿病〈GDM〉と診断され、インスリンの自己注射を行っている。
胎位が骨盤位であったため妊娠38週2日に予定帝王切開術を受け、3,050gの男児を出産した。
麻酔は脊髄くも膜下麻酔で、術中の経過に異常はなく、出血量は480mLであった。
弾性ストッキングを着用している。
児のApgar〈アプガー〉スコアは1分後8点、5分後10点。
児のバイタルサインは直腸温37.3°C、呼吸数45/分、心拍数154/分、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉99%であった。
児への対応で最も優先するのはどれか。
- 沐浴
- 血糖値の測定
- 経皮的黄疸計での測定
- ビタミンK2シロップの与薬
2.血糖値の測定
過去問「状況設定」
A君(8歳、男児、小学3年生)は、父親(40歳、会社員)と母親(38歳、主婦)との3人暮らし。
多飲と夜尿を主訴に小児科を受診した。
尿糖4+のため、1型糖尿病の疑いで病院に紹介され、精密検査を目的に入院した。
A君は身長123cm、体重27.5kg(1か月前の体重は29.5kg)。
入院時のバイタルサインは、体温36.9°C、脈拍100/分、血圧98/42mmHg。
随時血糖300mg/dL、HbA1c9.3%、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ〈GAD〉抗体陽性。
尿糖4+、尿ケトン体3+。
血液ガス分析pH7.02であった。
入院後、インスリンの持続点滴静脈内注射が開始された。
入院後3日に血糖値が安定し、インスリンの持続点滴静脈内注射が中止された。
ペン型注射器によるインスリン療法が開始され、看護師は母親とA君に自己血糖測定とインスリン自己注射について説明した。
A君は「自分で注射するなんてできない」と言ってインスリン自己注射の練習が進まない。
A君への看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- インスリン自己注射の必要性を繰り返し説明する。
- A君が納得するまで母親にインスリン注射をしてもらう。
- インスリン自己注射ができるようになったら退院できると話す。
- インスリン自己注射をしている同年代の糖尿病患児と話す機会を作る。
4.インスリン自己注射をしている同年代の糖尿病患児と話す機会を作る。
過去問「状況設定」
Aさん(75歳、男性)は、妻(70歳)と2人暮らし。
2型糖尿病の治療中で、2年前から1日2回朝・夕食前に混合型インスリン注射が開始となった。
その後、糖尿病性網膜症による視力障害が進んだため、現在は妻と一緒に単位数や針の確認をし、インスリンの自己注射を実施している。
外来受診時にAさんの妻から外来看護師に「2人で協力してインスリン注射することには慣れてきました。たまには夜に夫とゆっくり和食を食べに行きたいのですが、外出時の注射で気を付けることを教えてほしい」と相談があった。
Aさんと妻への外来看護師の指導内容で適切なのはどれか。
- 「お店に着いたらすぐに注射を打ちましょう」
- 「インスリンを常温で持ち運ぶことはできません」
- 「注射ができる場所をお店の人に確認しましょう」
- 「普段よりもインスリン量を増やす必要があります」
3.「注射ができる場所をお店の人に確認しましょう」
ポイントは一般や状況設定の問題が多く、難易度が高めなことです。
過去の問題の正解答を元に状況に合った正しい対応を覚えます。
3、まとめ
- 分量:単位(U)
- 1単位:0.01ml
- 投与経路:皮下注射
- 同一部位のリスク
- 脂肪組織萎縮
- 硬結
- 皮下注射部位
- 腹部
- 上腕
- 臀部
- 大腿部
- 副作用:低血糖
- 過去問
- 災害に備えてAさんに指導する必要があるのは「使用しているインスリンの名称を正確に覚える。」「消毒薬の入手が難しい場合は消毒せずに注射してもよい。」
- 膵癌の手術予定でインスリンで血糖コントロールに不安があるAさんに必要な指導は「血糖のコントロールは術後の合併症を予防するために必要です」
- インスリン製剤について正しいのは「飛行機に搭乗する際は手荷物として持ち込む。」
- Aちゃん(11歳、1型糖尿病)と両親に対するインスリン自己注射の指導で適切なのは「インスリンを注射する部位は前回と違う部位に行う。」「食欲がないときは食後に超速効型インスリンを注射する。」
- 同居しているAさん(76歳)の長女からインスリンの量が多い時があったと相談を受けた外来看護師が行う長女への助言で適切なのは「インスリンの量は娘さんが一緒に確認しましょう」
- 一人暮らしのAさん(68歳、MMSE:29点)よりインスリンの打ち忘れ、隣の市に住む娘によりインスリン未使用があることがわかった外来の看護師が、Aさんと娘への助言は「化粧で使う鏡に「朝食前に注射」のメモを貼る。」
- 妊娠25週4日に妊娠糖尿病〈GDM〉と診断され、インスリンの自己注射を行っていた妊婦が出産し、児への対応で最も優先するのは「血糖値の測定」
- A君(8歳)が自分で注射するなんてできないと言ってインスリン自己注射の練習が進まないとき、A君への看護師の対応で最も適切なのは「インスリン自己注射をしている同年代の糖尿病患児と話す機会を作る。」
- 外出時の注射で気を付けることを教えてほしいと相談があった外来看護師の指導内容で適切なのは「注射ができる場所をお店の人に確認しましょう」
勉強お疲れ様なのだ
休憩も必要なのだ